運命の桃花~宸汐縁~第57話 魔君の再来

第57話 魔君の再来運命の桃花

運命の桃花 第57話 あらすじ

景休けいきゅう翎月れいげつ花煙かえん殺しの罪を認め、逃亡した。元瞳げんどうは荒涼の地に逃げた景休を魔君になるよう説得した。景休は魔君になることを決意した。九宸と霊汐は天尊に婚姻の許可をもらいに行った。霊汐の意思と無関係に進められ不満顔の霊汐に九宸は再度求婚した。霊汐は返事を保留にしたまま桃林に帰り、泥酔した。泥酔した霊汐は素直になり迎えに来た九宸と従極淵しょうきょくえんに向かった。

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運命の桃花 第57話 登場人物

霊汐桃林出身の仙女。山霊界の国主。丹鳥族と鳳凰族の血を引く。
九宸天族の戦神。神尊。
景休山霊界の国師。翎月、宝青を殺した。
赤鷩景休の腹心の部下。
青瑶霊汐の姉弟子。
承晏青瑶の弟。
十三扶雲殿の侍女。元は鮫人族の男性だった。司命のことが好き。
司命人間の運命を司る神仙。韓元信。
元瞳悪行を重ね、仙骨を抜かれ人間界に落とされた。元は天族の将軍だった。

運命の桃花 第57話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

霊汐れいせき景休けいきゅう天息宮てんそくきゅうに呼び出し、翎月れいげつ暗殺について問いただしている。

「母上を殺したのか言いなさい」
霊汐は景休に向かって叫んだ。

「そなたがそう願うなら、私の仕業だとしよう。私と母君の翎月は因縁の仲だ」
「やはりね」

「我が一族は、そなたの祖父垣渡えんとに滅ぼされたが、私は山霊族のため翎月れいげつを支えた。だが5万年前赤子のそなたを救えなかった件で翎月に叛意を疑われ無実の罪で幽閉された」

「そこでお前は、あえて仲昊ちゅうこうを増大させたのち、垣渡えんとを討ち翎月国主も殺した」
九宸は言った。

翎月れいげつは生かす気だった。巫医ふいに薬を変えさせたのは、長く眠らせるためだ。機が熟したらそなたに打ち明けようと。だが青瑶せいようが現れ、全てぶち壊された。そしてこんな事態に」

花煙かえんも殺したの?」
霊汐は景休を見た。

花煙かえん…。私が死なせた」
「どうかしている」

「いいや。言っておくが、やつのせいでそなたは実母と生き別れ魔気に侵された。楽伯らくはくの死もそなたのあらゆる苦しみもやつのせいだ」
景休は九宸を指さした。

「それでも愛するのか」
景休は霊汐に問うた。

「あなたは変わった」
「これが私だ。昔から変わらない」
景休は霊汐を見つめた。

「景休国師、罪を認めた以上神妙にお縄につけ」
九宸の言葉を景休は鼻で笑った。

「お縄につけ?九宸」

朝堂の調度が浮き上がり、九宸に向かって飛んでいった。
隙をついて景休は赤鷩と共に朝堂から逃げた。

そとは開陽かいようが守っていたが、景休は開陽を赤鷩に任せ、独り逃げた。

霊汐が部屋で報告を待っていると、九宸が帰ってきた。

「捕らえた?」
「国境まで追ったが逃げられた。追っ手を放つよう天君に要請した」

「景休は人間界にいた時とまるで違う」
霊汐は悲痛な表情をしている。

「そなたはやつの本性を知らなかっただけやも。何はともあれ母君の死因は分かった」

司命しめいは運命簿を次々開き、何かを探している。

「人間の運命に手出しをすれば天罰に遭うのに、神尊は“花煙かえんの運命を変えろ。名家の令嬢も公主もだめ。皇后にせよ”と。しかも一夫一妻を貫いた皇帝に寵愛された皇后だ。私はもう天罰で死ぬしかない」
司命はそばで待っている十三にぼやいている。

「見つかったの?早くして」
十三は髪をいじっていたが、待ちきれない様子で司命をせかした。

「せかすとは。天罰で雷に打たれろと願っているな。なぜここにいる。雷雲を見張れと言っただろう」

「見たけど満天の星で雲ひとつなかった」

司命しめいはついに花煙かえんの運命簿を見つけ、十三は笑顔になった。

青瑶せいよう自悟崖じごがいで石になった雲風うんほうに話しかけている。

「美しい景色ね」
周囲には見渡す限り雲海が広がっている。

「このところ少し忙しくて会いに来られなかった。許して。でももう大丈夫。ここであなたのそばにいる」
青瑶は雲風のそばに座り、雲風にもたれかかった。

景休は雪の降る寒々しい丘に一人いた。
景休は空を見上げ、赤鷩が開陽に首を貫かれた場面を思い出している。

そこに元瞳げんどうが現れた。

「さすがは景休国師。戦神に追われても逃げおおせるとはすばらしい。はなから私を拒まないで。私はあなたを助けに来たのよ」

「助ける?お前ごときが?」

「あなたの力だけで九宸きゅうしんに打ち勝ち霊汐を奪い返すのは至難の業でしょう」

「お前に関係ない」
「なぜ関係ないの。私たちは共に見捨てられた。成し遂げたいことも同じ。国師さえ承諾すれば助けてあげられる」

「何がしたい」
「あなたを魔にする」

景休は声を立てて笑った。

「私を魔にするだと?去れ。遠くに去るのだ。二度と現れるな」

「まだ分かっていないようね。やつらに情けをかけても惨殺されるだけ。霊汐れいせきと九宸が結ばれる一方で、あなたは主を失った犬のごとく地の果てをさまよう。それでいいの?」

元瞳は景休に語りかけると立ち去った。

天息宮てんそくきゅうの前には臣下たちが集まり困惑していた。
国主である霊汐が何日も朝議に出ていないのだ。

新たに国師になった昶亭ちょうていは臣下たちの対応に追われていた。

「近頃水妖が大岳たいがく国で暴れているため、国主は耒耜らいしで治水を行いました。戻られたばかりで朝議に出られないのです」
昶亭ちょうていは臣下たちに説明した。

「そういうことか。しかし国主は高貴な身分でいらっしゃる。なぜ我らを送らず自ら治水に赴いたのだ。万一何かあれば取り返しがつかんぞ」

耒耜らいし神農しんのうが作った神器で上神しか扱えません。慈悲深い国主は衆生を哀れんだのです」
さらに昶亭ちょうていが説明すると、臣下たちは納得した様子を見せた。

「国師、国主の体調がすぐれないため朝議は取りやめます」
小福しょうふく昶亭ちょうていに報告にやって来た。

「体調がすぐれぬとはどのような病を患われた」
臣下たちは小福しょうふくに尋ねた。

「軽い病ですので、どうぞご心配なく」

集まっていた家臣たちは安心した様子で帰っていった。

「国師、国主がお呼びです」
小福しょうふく昶亭ちょうていに伝えた。

昶亭ちょうていは霊汐の部屋にいる。

「国主、山霊界の国境を広げるよう求める連名の奏状です。私も差し支えないと思います」
昶亭ちょうていは書状を霊汐に差し出した。

「お疲れでは?」
「あなたこそ。私に代わり奔走してくれている」

「国主に尽くすのは当然のことです」

食事の時間になり、昶亭ちょうていは退出した。

「お元気なのになぜ朝議に出ないのですか。政務を投げ出してると噂になってますよ」
小福しょうふく霊汐れいせきに尋ねた。

「別にいい。私は怠け者だもの。それに朝議に出れば、掟やら何やら大臣に言われる。面倒くさいの」

「それでも朝議には出ねば」
「これでいいのよ。有能な昶亭ちょうていに任せておけば安心だわ」

「ですが国師は悲惨です。お若いのに突然抜擢された。嶸英こうえい長老からは会うたびに不満をぶつけられてとても大変そうです」

「誰にも嫉妬されないのは凡才よ。昶亭ちょうていはわずか6万歳で上神に近い修為しゅうい(修練を積み得た仙力)があり、天宮に身を置いても見劣りしない。聡明で融通も利くし、才子だわ。この試練に耐えられないなら将来重責を担える?」

「重責とは?」
小福しょうふくは身を乗り出した。

霊汐は小福しょうふくに食事の用意を命じ、重責の内容については話さなかった。

扶雲殿にはいつもの面々が集まっている。
十三はお茶出しをして退出した。

黒蚩こくしの死後撼山かんさん族は半年余り内乱状態でした。しかし昶亭ちょうてい国師が兵を率いて出征し、たやすく内乱を鎮めました」
含章がんしょうは九宸に報告した。

「軍の威力を見せたのだ。撼山かんさん族はもともと好戦的で挑発に乗りやすい。近年多くの戦に絡んでいた。あとで天君の許しを得たら撼山かんさん族の新たな首領に会うゆえついてこい」

「おやめください。その役目は私たちに任せて神尊はここでお待ちに」
開陽が言うと、司命も同意した。

九宸は意図を測りかねた様子で開陽を見た。

「山霊界の国主は異族と婚姻を結べません。神尊を訴える声が何度も天君のもとに。なのに行けば…。撼山かんさん族を従えられても山霊族に宣戦布告されます」
開陽は話した。

「そのとおり。行ってはなりません。天君は神尊に“二度と山霊界に入るな”と。霊汐が恋しければ呼び寄せましょう」
司命は提案した。

「私は霊汐ではなく撼山かんさん族の首領に会うのだ」
九宸は厳しい口調で言った。

「この前神尊は巫月真人ふげつしんじんにお祝いを届けると言って、十三と共に姿をくらましました」
開陽は言った。

開陽かいよう、口が達者だな。天宮軍に置くのは惜しい。あの時私は縛霊淵に行ったのだ。縛霊淵は神界と魔界の狭間。状況が気になって探りに行った」
九宸は話した。

霊汐れいせきと会わなかったのですね?」
司命が九宸に確認すると、「当然だ」という答えが返ってきた。

十三がお茶を持って入ってきた。

「この前天息宮てんそくきゅうでもらったお土産です。霊汐が自ら煎りました」

十三は茶葉を持ってきていた。
「味見する?」
十三は一同を見回した。

「結構だ」
皆断り、十三はつまらなそうな顔をした。

九宸は十三をにらんでいた。

景休けいきゅうは雪景色の大地を歩いている。

元瞳は少し後ろを歩いていた。

「諦めが悪いな。まだ私に絡む気か」
景休は足を止めた。

「一体いつまで逃亡を続けるつもり?この荒涼の地でみじめに生きる気なの?」
「何がしたいのだ」

「知りたくはない?なぜ私は仙骨を抜かれても死地も同然の荒涼の地で生き延びられたか」

景休は少し反応を見せ、元瞳は景休に近づいた。

「私に力を授けたのは神ではなく魔なの」
元瞳はてのひらに魔種を出して見せた。

「魔種よ。無支むしきが死ぬ前に心魂を燃やして残ったものと、この世の全ての悪念。数年来私は各地を巡り、あらゆる貪婪や殺意や欲望を集めてきた。すでに強大になったわ。時機が到来したの。景休国師、これがあればあなたは新たな魔君になれる」

景休は元瞳を一睨みし歩き出した。

「お前も天族が憎いはず。なぜ自分で用いない」

「もちろん用いたいけど、私は仙骨も修為もない身。魔種の力を発揮させることができない。あなたは違う。素質に恵まれ、上神でもある。魔種の威力を存分に利用できるわ」

景休は笑った。

「たとえ魔の力を得ても、私だけでは天族の神々に勝てまい」

「もちろん打つ手は考えておいた。縛霊淵の底の幽冥ゆうめい門は魔界を封じている。門さえ開けば無数の魔があなたに従う。魔軍を率い天宮に攻め込むことも朝飯前よ。もう迷わないで。景休国師、これを逃せば二度と再起できない。偽善者たちに裏切られたのに憎くないの?己のものを奪い返したくはない?助けられるのは私だけ。私が縛霊淵ばくれいえんに飛び込み、幽冥ゆうめい門を開いて魔軍を迎え入れればあなたは大業を成せる」

元瞳は微笑み、景休は考えている。

「魔の道を究めることも修練よ。感情など何の役にも立たず足かせにすぎない。強大な力こそが永久不変なの。景休国師、早く決断を。私と共に天に背いて魔になりましょう。非情で欺瞞に満ちた万物を打ち負かし私たちの真理に根ざした魔の世界を築くの。いかが?」

景休は声を立てて笑った。

「お前が懇願しているのか。それともお前の心の魔種が懇願を?魔の力がどれほど強大でも、何者かに従属せねばならない。魔は六界の万物と衆生の悪念にすぎん。魔君とは、魔の道を究めし者。魔の道を一心に修めることも修練だと言えよう。魔種を渡せ」

景休は元瞳げんどうに手を差し出した。

「私の修練の道を貸してもらう」
元瞳は微笑み、景休に魔種を渡した。

元瞳は縛霊淵ばくれいえんに入っていき、幽冥ゆうめい門を開いた。

山霊さんれい界では鳥たちた騒いでいる。
霊汐は縛霊淵の異変を知り、縛霊淵から立ち込める魔気を封じようと力を送った。

天尊も異変を知り、縛霊淵に駆け付け霊汐と共に力を送った。
天尊が力を送ると、すぐに立ち込める魔気が収まった。

「何者?」
霊汐は天尊を見た。

「国主」
「誰なの」

「縛霊淵の魔気を浴びたであろう。そなたの修為では100日座禅せねばその魔気を浄化できない。私が手を貸そうか?」

霊汐はうなずいた。

天尊が霊汐を天尊山の洞窟に連れて行き力を送ると、霊汐が浴びた魔気は浄化された。

「感謝いたします」
霊汐は天尊に頭を下げた。

「構わん」
「恐れながらご尊名を伺っても?」

「私を知らぬのか」
「私は以前、天宮に住むも拝見したことがない。あなたほど仙力の強い方は一度会えば忘れません」

「国主が私を知らずとも、私はそなたをずっと前から知っておる」

「今日は何用で山霊界へ?」
「国主こそ、なぜ縛霊淵に行ったのだ」

「縛霊淵の上空に黒雲が湧きカラスが集まったので様子を見に行きました」

「何か分かったか」
「縛霊淵の虜囚が何かに驚き陰気が散ったようです」

「縛霊淵は神界と魔界の狭間だ。虜囚は絶えず魔気にさらされ、とうに怨霊となっておる。やつらがうごめいて陰気が散ることは珍しくない」

「今日は何かに気づいて縛霊淵へ?」
霊汐は天尊に尋ねた。

「いいや。そなたに会いに行ったのだ」

「私に?」
霊汐が驚いて尋ねると、天尊はうなずいた。

「霊汐、なぜここに?」
九宸がやってきて、霊汐に尋ねた。

九宸きゅうしん、私が霊汐を招いた」

「師匠に御挨拶を」
九宸は天尊に揖礼ゆうれいした。

「天尊ですか」
霊汐が気づき天尊に尋ねると、天尊はうなずいた。

青瑶せいよう自悟崖じごがいに机を持ち込み、食事の用意をしている。

今日は承晏しょうあんが来ていた。

「姉さん、雲風うんほう上神は石像に封じられただけなのに、死者への供物みたいだ」
承晏は言った。

「うるさい」

食事の用意が終わると、青瑶せいようは雲風に向かい合った。

「雲風、久しぶりに霊汐の顔を見てきたいわ。ちょうど桃林とうりんに用もある。すぐ戻るから怒らないでね」
青瑶は雲風の肩に手を置き、語りかけた。

「五感を封じられ何も分からないのに怒るか。上神はひと眠りしているだけさ。天君は身内に甘い。どこが罰だよ。修練を千年課し、雷刑で筋骨を鍛えさせる。千年後には戦神より仙力が強くなるかも」
承晏は青瑶に言った。

「いいから黙ってなさい」
青瑶は出かけて行った。

九宸は天尊に霊汐との婚姻について話した。

「師匠のお許しを賜りに参りました」
九宸と霊汐は並んで天尊の前に正座した。

「霊汐は山霊界の国主だ。異族とは婚姻を結べないはず」
天尊は言った。

「その件はすでに話し合いました。霊汐が国主の座を降りたのち、私が桃林とうりんへ求婚に行きます。霊汐は大ざっぱな性格で聡明でも美女でもなく国主としてもいいかげんです。しかし心が美しく私と縁があります。霊汐のことが好きなのでお許しください」

九宸は天尊に揖礼ゆうれいし、霊汐も九宸に倣った。

「そなたが好いておるならば止める道理などない。国主よ」

「はい」

「私の弟子はそなたに相当惚れておる」
「お恥ずかしい」

「ではさっそく準備に取りかかります」
九宸は言った。

「そなたたちの婚姻は両族に関わる大ごとだ。慎重に進めよ」
天尊は2人に助言した。

霊汐と九宸は天宮を一緒に歩いている。

「今日はなぜ師匠のもとにいた」

霊汐は何か考え込んでいるようで、返事がない。

「霊汐、師匠は山霊界まで足を運んだのか」
九宸は足を止め、霊汐に尋ねた。

「私はあなたに嫁ぐと言った?」
霊汐は不満顔だ。

「では誰に嫁ぐ」
「嫁がない」
「だめだ」
「また勝手に決める」

「そうではない。そなたが約束したのだ。真相を突き止め後継者が現れたら譲位すると。真相はすでに明かされ昶亭ちょうていもいる。機は熟したではないか」

「私は…」

「我らの婚姻は両族に関わる大ごとゆえ、まず師匠の許しを得て天君に報告してから求婚する。まさかそなたが来るとは」

「やっぱり私が悪いの?」

「構わん。責めたりしない」
「私が大ざっぱで聡明じゃないのはともかく、美女じゃないってどういう意味よ。あなたの目は節穴なの?」

「天宮の美女は数多い。そなたはまあまあだ。ほら帰るぞ」
九宸は歩き出した。

「帰るってどこへ?」

九宸と霊汐は扶雲殿ふうんでんに帰ってきた。

「九宸、私はまだ承諾していない。勝手に進めないでよ」

「そなたの意見を聞けと?」
「当然でしょ」

九宸は霊汐の手を引き寝室に連れて行った。

「では聞く。私の妻になってくれるか」
九宸は霊汐の手を握った。

「一生支え合って私から離れない?」
「もちろんだ」

「私を見守り寄り添って絶対に捨てないで」
「喜んで。他には?」

「私だけを愛して心変わりしないで。他の女を目で追うのもだめ」
九宸は霊汐に耳を向けた。

「私だけを愛して心変わりしないで。他の女を目で追うのもだめ」
霊汐は九宸の耳元で声を大きくして再度言った。

「ということは承諾してくれたのか」

九宸は霊汐に口づけしようとしたが、霊汐は口づけから逃げるように立ち上がった。

「もう少し考える」

九宸は部屋から出ようとする霊汐を背後から抱きしめた。

「まだ考えるのか。いかほどか」
「一月ね」

「長すぎる」
「じゃあ10日」

「それでも長い」
霊汐は笑顔を隠そうとポーカーフェイスを装った。

「だったら3日くらい。私はまだ用があるの。行くわね。3日後に返事する」

「待てない。ここで考えろ。今すぐだ」
九宸は帰ろうとする霊汐れいせきをつかまえ向き合った。

「今すぐ?」
「そうだ。よく考えろ。ひと息吐く間にな」

「ひと息…」
九宸は霊汐に口づけした。

十三、司命しめい、開陽と含章は九宸の部屋にやってきて、2人の口づけを見た。

十三は顔を覆い、霊汐は九宸の後ろに隠れた。

「失礼しました」
司命は揖礼ゆうれいした。

「何用だ」
「天君がお呼びです」

「よく考えておけ。分からなければ私が考える」
九宸は霊汐に口づけし、部屋から出て行った。

「神尊に嫁ぐのね?」
十三は霊汐に駆け寄った。

霊汐は照れていて何も言わない。

「そうでしょ?」
「なぜそれを?」

「天君が凌霄殿りょうしょうでんでおっしゃったの。天君は今頃婚礼のために神々を集めてるわ」
十三は霊汐を小突き、霊汐は微笑んだ。

霊汐は桃林に帰り、青瑶と承晏と共に茶を飲んでいる。

「婚姻が驚くほどのことか。戦神とお前の仲は誰もが知っている」
承晏は霊汐に言った。

「霊汐は神尊を好きじゃないの?」
青瑶は霊汐に尋ねた。
「好きよ」

「添い遂げる気は?」
「ある」

「だったらなぜ喜ばないの」

「浮かれてばかになったんだ」
承晏は言った。

「これまで辛酸をなめてきたから、いざ幸せが訪れると戸惑うのね」
青瑶は推測した。

「霊汐、婚姻を結ぶの?祝おう」
花蓼かりくが酒瓶を持って走ってきた。

「それは俺の酒だぞ。早く返せ」
承晏は立ち上がった。

「私の酒よ。私の髪で造ったの」
花蓼かりくは承晏から逃げた。

「婚姻の意味が分かるか」
「もちろん知ってる。受粉のことでしょ。花と花が受粉すると実がなる。でも戦神が龍で、霊汐は鳳凰ほうおう。実はならないから卵を」

花蓼かりくの言葉に、一同は微笑んだ。

4人は酒盛りを始めた。

霊汐は酔っ払い、足をふらつかせ花蓼かりくに支えられながら歩いている。

「九宸に会いに行く。…私は九宸がいいの」
酔った霊汐は素直になっていた。

その時、赤い橋の向こうから九宸が歩いてきて、霊汐は九宸に抱きついた。

「戦神、酔ったので連れて帰ります」
承晏は言った。

「構わん。任せろ」

九宸きゅうしん抱っこして。抱っこしてよ」
霊汐は九宸に甘えている。

「どこへ行く。天息宮てんそくきゅうか」
従極淵しょうきょくえんに行く。いい?」

「よかろう」
九宸は霊汐を抱き上げ、消えた。

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感想

景休さん。魔君になっちゃった。
山霊界の国師・当て馬・魔君
景休さんの役割多い!大活躍ですね。
景休さん、無支むしきみたいに人外な見た目になっちゃうのでしょうか!?

永遠の桃花には魔族って出てこなかったのですが、夢幻の桃花には魔族が出てくるのです。
夢幻の桃花での魔族の見た目は神族と変わらないですし、縛霊淵を通らなくても行けます。
夢幻の桃花の1話で、鳳九は魔界に迷い込みます。そのくらい軽い感じで行ける場所です。魔族の人たちもいい人の方が多いと思います。

でも運命の桃花だと、魔族は縛霊淵の下の幽冥ゆうめい門の奥に閉じ込められている設定のようですし、4代目の魔君まくんしか私たちは知りませんが、4代目魔君の無支むしきはファンタジーRPGのラスボス的見た目で人外でした。
景休さんの見た目がどうなるのか注目したいです!

花煙は死んでしまって人間になっているようです。
神尊のおかげで、人間界では唯一の皇后として愛されて幸せな一生を送る様子。

神尊は天君に「山霊界に入るな」と言われているのに、何度も霊汐に会いに行っている様子(≧▽≦)
十三の活躍(!?)で神尊の嘘がみんなにばれました。
コメディパート面白かったです。

霊汐は神尊がどんどん婚姻について進めているのを嬉しく思うものの、不満もある様子!?

いつのまにか周りを固められていましたし、美人でもないと言われたのが頭に来ているようです。
でもお酒の力ですぐ仲直りですね!

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感想(0件)

コメント

  1. Sara より:

    景休さん・・
    もう宝青も側近の二人も誰もいなくなって独りぼっちに。。。
    悪事を重ねると負のスパイラルに陥るってこういうことなんだなって思ってしまいましたよ。
    ちょっとかわいそうな気もしますが、、

    数年来、人々のあらゆる貪婪や殺意や欲望を集めてきた、元瞳。
    この世の全ての悪念を集めた、魔種。
    ゾッとしましたねー(–)

    「私と共に天に背いて魔になりましょう。私たちの真理に根ざした魔の世界を築くの。いかが?」
    完全に悪女と化してしまいました。メイクもそんな感じに変わりましたね。
    そして言葉巧みに誘いに落ちた景休・・

    元は二人とも魔とは対峙する立場にあった者なのに、こうやって人(神?)は隙をつかれて悪に引き込まれて行くんですね~
    私も心したいと思いました。(__)

    • みょんみょん より:

      たった数年で集まってしまうくらい、この世には貪婪や殺意や欲望がたまっているということなんですね(; ・`д・´)
      怖いです。

      元瞳さんのメイクや服装も悪女感すごく出ていました。
      綺麗な方なので、悪の迫力(?)を感じました。
      私も心したいと思います!

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