運命の桃花~宸汐縁~第54話 決断の時

第54話 決断の時運命の桃花

運命の桃花 第54話 あらすじ

九宸きゅうしん霊汐れいせきに会いに山霊さんれい界へ行き、霊汐に対する思いを伝えた。元瞳げんどうは魔から新たな魔君を探すよう命じられた。青瑶せいようの薬が完成し、景休けいきゅう翎月れいげつを殺す決断を下した。宝青ほうせいは景休たちの密談を聞いてしまい、景休も宝青が聞いていたことに気づいた。翎月が目覚め石ばあやは霊汐が生きていることを伝えた。景休は翎月を殺すため天息宮てんそくきゅうに入っていった。

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運命の桃花 第54話 登場人物

霊汐桃林出身の仙女。山霊界の国主・翎月が5万年前に生き別れた実の娘。
九宸天族の戦神。神尊。
景休山霊界の国師。霊汐を悲しませないため翎月を殺さないと決めた。
青瑶霊汐の姉弟子。薬王洞で働いている。
玉梨青瑶の姉弟子。薬王の娘。
十三元は鮫人族の男だった。扶雲殿の侍女。
司命人間の運命を司る神仙。
花煙扶雲殿の侍女だったが、鑚心釘を盗み追放された。霊汐に助けられ侍女になった。
小福石ばあやの部下の侍女。
元瞳天族の将軍だったが、悪事を重ね仙骨を抜かれ荒涼の地に落とされた。

運命の桃花 第54話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

霊汐れいせきは部屋で肘置きにもたれて寝ていた。

「公主、床を敷いたのでお休みください。国主の看病で寝不足のはず」
花煙かえんは霊汐に寝台で眠るよう促した。

「“霊汐れいせき”でいいと言ったでしょ」
「だめよ。掟は守らなきゃ。あなたは公主なのよ」

「本当に暖かい。ここで寝る」

「扶雲殿にいた頃も机に突っ伏して寝てたわね。では公主、失礼します」
花煙かえんは退出した。

しばらくすると琴の音が聞こえて来た。
霊汐が琴の音色に誘われて歩いてくと、景休けいきゅうが琴を弾いていた。

弾き終わるまで聞き、霊汐は景休に声をかけた。

「何の曲?」
「『千字文せんじもん』だ。そなたが幼い頃、父君がよく歌っていた。耳がよくなったら、この歌を聞きたいと言っていたな」

「父に会ったの?」
「そなたの家へ行った時、見かけた」

「なぜ私の家へ?」
もくの過去が知りたくて。もく…」

霊汐れいせきと呼んで。戻って随分経つし、もくは過去のことよ」
「過去?たった一月だ」

「私にとってはわずか30日でも、全てが一変し隔世の感がある。国師、私が霊汐であれ、りんもくであれ、あなたを敬うわ」
霊汐は景休けいきゅうに目礼し、去っていった。

霊汐が外に出ると、1羽の赤い鳥が飛んできて近くにとまった。
霊汐は鳥の足についていた長生結ちょうせいけつを受け取った。

扶雲殿ふうんでん九宸きゅうしんは、玉梨ぎょくりの往診を受けていた。

「どうですか」
そばにいた司命しめい玉梨ぎょくりに尋ねた。

女媧石じょかせきはすでに回復し、血脈とのつながりがより強固に。きっと仙力も大きく増すでしょう。思わぬ収穫ですね。…薬はきちんとお飲みください。お体は大事ないですが、これを機に女媧石じょかせきを血肉と融合させて体の一部にすれば今後の修練に役立ちます」

「承知した。かたじけない」
九宸は玉梨を見て言った。

「私の本分ゆえ、お礼など結構です」
玉梨ぎょくりは九宸を見つめた。

十三は咳ばらいをした。

「他に何もなければ私はこれにて」
玉梨ぎょくり司命しめいに送られ、帰っていった。

十三は玉梨の後姿をにらんだ。

十三じゅうさん、茶を」
九宸が命じると、十三は不機嫌そうに部屋を出て行った。

司命は玉梨を送りながら、2人で話している。

「薬王はまた遊歴に?」
「西荒で水害が起こり疫病が流行してる。父はあに弟子たちを連れて救済に行ったわ」

「薬王洞の切り盛りを任され大変でしょう」
「別に平気よ。私は務めを果たしてるだけ」

「すばらしい。ただ手放すことも善行と言えます。つまり、執着を手放せばご自身も楽になるはず」
司命は言った。

「私はいつ神尊を好きになったと?はるか5万年前で、霊汐よりずっと前なのよ。不運にも神尊の心をつかめなかったけど、別に好きでいてもいいでしょ。どうして私が諦めなきゃいけないの。それに今日は好きでも明日は気持ちが変わるかも。明日は好きでもあさってはそうじゃないかも。この思いを手放すかどうかは私が決めることよ。口を出さないで。失礼」

玉梨ぎょくりは帰っていった。

司命が玉梨を見送り振り返ると、十三がいた。

「余計なお世話なのよ」
十三は司命にそれだけ言うと、踵を返し歩き去った。

司命はきょとんとした顔で、辺りを見回した。

含章がんしょうは扶雲殿に報告にやって来た。

げん家の新たな当主が先日来ました。げん家の戦功に免じ元瞳げんどうをお許しにと。元瞳は仙骨を抜かれ荒涼の地へ。死は免れないでしょう」

元瞳げんどうの罪は万死に値する。それでも死罪に処されず寛大な処分を賜ったのに、げん家は先祖の威光を頼りに泣きついてきた。げん家の没落は偶然ではないな。天宮の罰は戒めるためにある。“戒める”とは反省し身を慎むことだ。元瞳は大きな過ちを重ね、自省もせず神の名を汚した。善と悪、どちらを選ぶかは自分自身だ。元瞳は悪を選んだ以上責めを負わねば。…げん家の者が来たら追い返せ」

九宸は含章がんしょうに命じた。

ちょうど司命しめいが戻ってきて、九宸は従極淵しょうきょくえんにしばらく籠もることを伝えた。

「行き先は従極淵しょうきょくえんではなく山霊さんれい界では?」

司命が言うと、九宸は司命を一瞥し去っていった。

「山霊界の公主は私なのよ」
宝青ほうせいは侍女たちに物を投げつけ暴れ、侍女たちは必至で宝青を止めていた。

1人の侍女が戻って来た。

「景休さんは?」

「多忙ゆえ来られないと仰せでした」
侍女は言いにくそうに宝青に報告した。

宝青はものを蹴り、侍女たちはひれ伏した。

「お怒りなきよう。国主が目覚めたら味方になってくれます」
侍女は宝青をなだめた。

「味方になる?実の娘がいたら私なんか忘れるわ」
宝青は声を荒げた。

霊汐は翎月の寝台を枕にし眠っていた。
せきばあやが霊汐の背に上掛けをかけると、霊汐は目を覚ました。

「公主、私が付き添うのでお休みください」
「今休んだから大丈夫」

「顔くらい洗わねば。公主たる方が身だしなみも整えないなんて」
「私が倒れるかと心配?」

「とんでもない。上神ともなれば数日寝なくても平気でしょう」

「ではなぜ休めと言うの」
せきばあやは返す言葉が見つからず息を飲んだ。

「ばあやは私を身内と思ってくれてる。私が巫医ふいの問題に気づいた時からよね。ありがとう」
霊汐は微笑んだ。

山霊界との境界を金色の光が通り抜け、五椀ごわんが霊汐に会いに来た。

小福しょうふくと1人の侍女が噂話をし、花煙かえんが聞き役をしている。

九宸は木陰から3人の様子を見ていた。

「宝青公主は近頃かんしゃくを起こして、お付きの者を全員罰したそうよ」
「あの方はいつでも不機嫌でしょ。誰も罰しないほうが変よ」
小福しょうふくは言った。

「国師が構ってくれないから怒ってるとか。なぜ宝青公主は国師に好かれないと思う?」
「知るわけないわ」

「国師が好きなのは霊汐公主だからよ」
霊汐れいせき公主はお優しく戦神にも慕われてる」

「戦神?もうお年寄りでしょ」
1人の侍女は顔をゆがめた。

「戦神がお年寄りですって?」
「十数万歳で国主よりも年上よ」

「神仙は皆長命だから、そんなこと気にしない。それに戦神は見たところとても若々しいわ。そうよね、花煙かえん

話を振られたが、花煙は話を聞いていなかったようだ。

「あなたっていつもうわの空ね。何を…」
小福しょうふくが話そうとした時、霊汐れいせきが五椀と現れた。

「大した度胸だわ。戦神のことをあれこれ言うなんて」
霊汐は侍女たちのうわさ話をたしなめ、侍女たちは仕事に戻っていった。

五椀ごわんは木陰のほうを霊汐に示し、霊汐は五椀の示す方に向かった。

誰もおらず、霊汐が辺りを見回していると、背後に九宸が現れた。

「なぜここへ?戦神たる方が侍女の話を盗み聞きしてたの?笑われるわよ」

「山霊族は鳥の一族だけあってよくしゃべる」

「そうかしら。おしゃべりといえば天宮こそ一番よ。上は雲風うんほう上神から下は開陽かいよう司命しめいまでみんな口が達者よね。こそこそ来るなんて誰かに見つかれば面倒よ」

「見つかるわけがない」
「私がすぐ見つけたでしょ」

白澤はくたくがいなければ無理だ」
「ええ。戦神の仙力は六界で一番よ。偉大なる戦神がちっぽけな山霊界に何のご用?」

従極淵しょうきょくえんにしばらく籠もる。用があれば従極淵しょうきょくえんに来てくれ」

「行くものですか」
霊汐は九宸に背を向けた。

「ええ分かったわ。じゃあ行って。失礼」
霊汐は歩き出した。

「薄情者め」
「誰が?」
霊汐は振り返り九宸をにらんだ。

「そなただ。もう一月も経つのにまだすねているのか」
「あなたに2度も殺されたのに怒るなと言うの?」

「そなたのためだ」

「本当に痛かったし悲しかったのよ。あなたは年長で仙力も強いから、弱いものいじめをして真心を踏みにじった。過ちを認める?」

「理不尽だ」
「どこがよ」

「公主」
小福しょうふくが霊汐を呼ぶ声が聞こえて、霊汐は九宸きゅうしんと共にしゃがみ隠れた。

霊汐は九宸の体に腕を回し、しがみついている。

五椀ごわん、公主はどこ?」
小福しょうふくは五椀に聞いているが、五椀は九宸の顔色を見て、全く別のほうを示した。

小福しょうふくは五椀の示す方に捜しに行った。

「何を恐れている」
九宸に問われ我に返った霊汐は、体を離し立ち上がった。

「別に」
「なぜ隠れた」

「あなたのためよ。何か魂胆があって山霊界に来たと思われるわ」

「確かに下心がある」
九宸は霊汐を引き寄せた。

「離して」
「嫌だ」

「自重してよ」
「当初、そなたのほうから手を出してきた」

「私が手を出したですって?十数万歳の年寄りがでたらめを」

「私は戦神だ。道理など考えずに腕ずくで解決する」

九宸は口づけしようと霊汐に顔を寄せ、霊汐は大きくのけぞって九宸の口づけを躱そうとしたが、唇が触れた。

「ほら、もう怒るな。過去のことは私にも非があったが、共に辛酸をなめてきた。私の心は分かっているはずだ。もし怒りが解けぬなら言ってくれ。もう二度と私を冷たく突き放すな」

霊汐は涙の光る顔で微笑んだ。

「私は十数万年生きてきて、一度も孤独を感じたことはなかった。だがそなたが現れ、私に気持ちを告白した。責めを負え」

「責めって?」

「一緒にいることだ。私はもはや、そなたなしではいられない」

霊汐は笑顔を隠し切れない。

「口づけで帳消しになると思わないで」

「もう一度」
九宸は隙を突き、素早く口づけをした。

「ちょっと。十数万歳の年寄りのくせに…。どうしちゃったの。どこで覚えたのよ」
霊汐は拳をにぎり、軽く九宸を殴った。

「年寄り?私は年か」
「もう帰って。青瑶さんが丹薬を作る間、私は母を見守るの。もし暇ができたら、その…」

「何だ」
従極淵しょうきょくえんに行く」

2人は微笑みあい、別れた。

従極淵しょうきょくえんに到着した九宸きゅうしんは、出迎えた小仙に、少しためらってから声をかけた。

「私は年か」

「年とは?何をおっしゃいます。それは比べる相手によるでしょう。天尊と比べれば神尊はずっとお若い。もし私と比べれば、神尊のほうがやや年上でいらっしゃる。しかしお顔は美しさを保っており、私よりお若く見えますぞ」

小仙は九宸が去った後、自分の答えが正しかったのか自問した。

九宸は籠もり、「美顔術」の書を熟読した。

霊汐は眠ったままの翎月に話しかけている。

「母上、今日神尊が来ました。神尊をご存知ですか。戦神です。私と一緒に天息宮てんそくきゅうに来たことがあります。神尊は今日、こう言ってくれたんです。もはや私なしではいられないと。あんなことを言うのは初めて。以前はいくら優しくしてくれても口には出さなかった。母上、私は近頃運気が上がってきたようです。魔気が消えて母上も見つかった。神尊さえ…」

霊汐は翎月の腕に頬を寄せた。

「母上、早く目覚めてください。話したいことがたくさんあります」

元瞳げんどうは荒涼の地で倒れていた。

夢の中の元瞳げんどうは、雷の鳴り響く、黒紫の空の下にいた。
己の名を呼ぶ無数の邪悪な声を聞き、元瞳は耳を押さえうずくまった。

声が聞こえなくなり、元瞳が辺りを見渡すと元征げんせいが歩いてきた。

どうよ」
「兄上」
元瞳は元征に近寄った。

「“兄上”でもよい」
「何者よ」
兄ではないと感じ、元瞳は後ずさった。

元征は黒い煙になって消え、魔君の顔が現れた。

無支むしき?死んだはずでは?」

「当代の魔君まくんは確かに死んだ。だが魔は永遠に消えない。天は万物を生む。善があれば悪があり、生があれば死があり、有があれば無がある。心の悪念とは、貪婪や憎悪や殺意であり、多くの罪業をもたらす。それが魔だ」

「ありえない。無支むしきが死ぬのをこの目で見た。霊汐れいせきが劫を経ると、お前は六界から消えたのに。なぜまた現れた」

「まだ分からぬのか。無支むしきは私が選んだ魔君にすぎない。私は魔。つまり心の根源だ。さまざまな形に姿を変え神出鬼没でもある。消えるわけがない」

「私に会いに来たのは、私を魔道に導き、新たな魔君にするため?」

元瞳が問うと、魔は声を立てて笑い、元征の姿になった。

「仙骨すらないお前が、どうして魔君になれる。魔の力は無限ゆえ、感情を断ち心を悪で満たし強大な神魂と優れた仙骨がなければならん」
元征はあざ笑った。

「それなら、なぜ私の夢に?」

「機会をやろう」
「機会?」

「母上の敵を討ち、己の恨みを晴らせ。そうすることで恥辱をそそぐのだ。さすれば私もあの世で心おきなく眠れる」
元征の姿の魔は、元瞳の腕をつかみ言った。

「私は何を?」
「ある者を探せ」

「誰?」
「新たな魔君だ」

元征は消え、元瞳げんどうは目を覚ました。

薬が出来上がり、青瑶は翎月れいげつに薬を飲ませた。

景休けいきゅうもそばにいる。

「青瑶さん、どう?」
霊汐は青瑶に尋ねた。

「安心して。国主は近々お目覚めになるはずよ」
青瑶の言葉を聞いた霊汐は、安堵の涙を堪え微笑んだ。

「さすがは名医だ」
景休は青瑶に声をかけた。

「恐れ多い。国主の仙力なら、私がいなくても覚醒なさいます」

花煙かえん小福しょうふくは景休を見送った。

花煙はずっと景休けいきゅうを見つめている。

「花煙、花煙」
小福しょうふくに呼ばれ、花煙は我に返った。

「食い入るように見てた」
小福しょうふくは花煙に言った。

「何を言うの」

「国師は仙力が強くて美男子だけど、好いていい方じゃない。宝青公主に知られたら命がないわよ。行きましょ」
2人は仕事に戻った。

宝青が小亀を戦わせて遊んでいると、侍女が帰ってきた。

「公主、医官が国主を診に来ました。見にいかれては?」
「他の者がでしゃばるのを見るの?」

「もし国主が目覚めた時、公主がそばにおらず霊汐れいせきしかいなかったらよくありません」

「私がいて何になるの。母上は寂しさを紛らわすため私を育てただけ。実の娘が現れたら私なんか必要?母上はずっと眠ってればいいわ。目覚めたら私の居場所はない」

「公主おやめください」
侍女は周囲を見回した。

「自分の居所で本音も言えないわけ?母上ばかりか景休けいきゅうさんまであの女狐に夢中よ。あれは根っからの性悪女だわ」

「国師とは近頃会ってません」

「本当?」
宝青は顔を輝かせ、侍女を連れ景休けいきゅうに会いに行った。

景休は森の中で琴を弾いていた。
黒蚩こくし赤鷩せきべつが近くにいる。

「国師、医官の薬が効けば国主はじきに目覚めます」
赤鷩は言った。

「我らは国主の目の前で垣渡えんとを殺し、今は国主の命を狙っている国主が目覚め権力を取り戻せば万事休すです」
黒蚩こくしも訴えた。

景休は琴を弾き続けている。

景休に会いに森に来た宝青は、話を聞いていた。

「霊汐公主とて、国師よりも己の母親を信じるでしょう。手を下すべきです」
黒蚩こくしはさらに訴えた。

「黙れ」
景休は琴を弾くのをやめた。

「国師、国主が目覚めれば霊汐公主はいずれ…。今やらねば手遅れに」
赤鷩は訴えをつづけ、黒蚩こくしと共に景休けいきゅうに決断を迫った。

「手を下すしかない」
景休は言った。

宝青は踵を返し帰っていき、景休たちは宝青が聞いていたのに気づいた。

自分の宮殿に帰った宝青は部屋の中を歩き回った。

「国師は国主を殺そうとしてますよ。どうしますか。今すぐこのことをせきばあやに伝えてきます」
侍女は行こうとしている。

「だめよ。絶対に行かないで」
宝青は叫び、侍女を引き止めた。

「少し考えさせて。打つ手を考える」

宝青は翎月れいげつの部屋に向かった。

翎月はまだ目覚めておらず、宝青は寝台に腰かけ翎月の顔を見守った。

「霊汐公主は?」
せきばあやは小福しょうふくに尋ねた。

「薬を煎じてます」
「それは侍女の役目よ。なぜ公主の手を煩わすの」

「自分でやるとおっしゃったんです」

「国主は薬を飲む時分だと公主に知らせて」
せきばあやに命じられ、小福しょうふくは出て行った。

宝青は眠る翎月を見ながら、昔のことを思い出していた。

机に突っ伏し眠ってしまった宝青に、翎月は上掛けをかけている。
すると宝青が目を覚ました。

「母上、まだ起きてたの?」
「部屋が明るいから見に来たのよ。そんなに薄着で寝たら風邪をひくわ」

「風邪なんかひかない。私は地仙に昇格したからどんな毒にも侵されないの」
宝青は笑顔で翎月れいげつにもたれかかり、翎月れいげつは宝青を抱いた。

「しっかり修練なさい」
「分かってる」
2人は微笑みあった。

宝青が深刻な表情で翎月を見つめているのに気付き、せきばあやは声をかけた。

「宝青公主、心配事でもおありなのですか?」
「別に」

「もしお疲れなら居所へ」
「だけど…」

「国主の回復は順調です。目覚めたら必ずお伝えします」
宝青は何度も翎月れいげつを確認し、帰っていった。

せきばあやがうつらうつらしていると、翎月れいげつが目覚め、起き上がろうとし咳をした。

「お気づきに?」
せきばあやは翎月に駆け寄った。

「よかった。喜ばしい。霊汐公主を呼んできます」

霊汐れいせき?」
「はい。ご令嬢は生きておられたのです。ごうを終えてお戻りに」

「戻ってきた?」
せきばあやはうなずいた。

宝青が天息宮てんそくきゅうから出てくると景休と赤鷩せきべつがやってきた。

天息宮てんそくきゅうを守る兵たちが次々景休けいきゅうの手の者に殺されていく中を、景休と赤鷩がゆっくり歩いていく。

景休は宝青たちの前で足を止めた。

「景休さん」
宝青は緊張で身を固くしている。

「国主のお見舞いを?ご容体は?」
「安定してる」

「見てこよう」

宝青はとっさに景休の袖をつかんだ。

「景休さん」
宝青は景休を見た。

景休は宝青の手を優しく下ろさせた。

「今夜は風雨が強そうだ。早めに休め。出歩くな」
景休と赤鷩は中へ入っていった…。

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感想

神尊が霊汐に想いを伝え、2人の思いが通じ合いました。
「私はもはや、そなたなしではいられない」だそうです!!!

神尊があんなに情熱的な感じになるとは。
雲風上神が授けた極意がまだ活かされているようです。

霊汐と神尊、どちらが先に手を出したか問題。
これ、霊汐ですよね!?
今回だけ見てると神尊が先に手を出していたみたいに聞こえますがっ!

霊汐の笑顔がすごくよかったです。
本当に演技がお上手だと思いました。

花煙は小福にも言われているように、うわの空で景休さんのことを考え、景休さんのことを見ています。
景休さんのことが好きなのでしょうか?
恩人を好きになった?
そうだとすると景休さんのモテ具合すごい

小福が「(景休さんを好きだと)宝青公主に知られたら命がないわよ」と花煙に言っていました。
そういえば、景休さんの周りには女性がいないような。
もしや全員宝青に!?

景休さんがついに手を下すと決めました。
最後の所はすごく怖かった。人間界でラブコメやってた方とは思えません。

宝青の立場、めちゃくちゃ怖い。
何をしようとしているか知っている宝青。
兵がバタバタ殺されてる横を、景休さんがゆったり歩いてきて…。

なんとういか、こういうゾクゾクするような怖さを感じる場面って、他の桃花シリーズにはない気がして、そこが良かったです!

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