運命の桃花~宸汐縁~第52話 不穏な情勢

第52話 不穏な情勢運命の桃花

運命の桃花 第52話 あらすじ

元瞳げんどうは人間界に落とされた。霊汐れいせき青瑶せいよう山霊さんれい界に招き、翎月れいげつを診てもらった。青瑶の力を借り、霊汐は翎月に処方されている薬が今の翎月には毒になるものだと気づいた。薬を処方した巫医ふいはすでに自害していた。攢心釘さんしんていを盗んだ犯人探しは続いていた。天雷の配下は赤い月の夜のアリバイのない侍女を捜していた。

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運命の桃花 第52話 登場人物

霊汐桃林出身の仙女。山霊界の国主・翎月が5万年前に生き別れた実の娘。
九宸天族の戦神。神尊。
景休山霊界の国師。一族の敵である垣渡を殺すことに成功した。黙を愛した。
青瑶霊汐の姉弟子。薬王洞で働いている。
承晏青瑶の弟。
司命人間の運命を司る神仙。
十三元は鮫人族の男だった。扶雲殿の侍女。
花煙元は人間だった。扶雲殿の侍女。景休の命で鑚心釘を盗んだ。
石ばあや翎月の腹心の部下。
欽原魔君に忠誠を誓い倒れた仲昊の義理の息子。

運命の桃花 第52話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

司命しめい九宸きゅうしんに付きまとっていた。

「どちらへお出かけですか。霊汐れいせきを訪ねて山霊さんれい界へ?雲風うんほう上神を見に自悟崖じごがいへ?私もお連れに。神尊お供させてください。もしくは、十三じゅうさんが司命殿に来ぬようお命じに。あの日傷だらけの神尊に動揺した私はつい十三じゅうさんと、少しばかり親密になりまして。十三じゅうさんは婚姻の約定書を書いてよこしました。婚姻はままごととは違うのですぞ。なのに十三は司命殿を去りません。じゃじゃ馬の手綱を握りにお出ましください」

司命は九宸に懇願した。

紫光しこう元瞳げんどうを連れ通りかかり、九宸たちとすれ違った。

紫光しこうは九宸に揖礼ゆうれいした。
九宸は軽く紫光しこうに頷き歩き去った。

紫光しこうが南天門に着くと、杜羽とうが待っていた。

元瞳げんどう将軍は実に果報者だ。事ここに至っても見捨てぬ方がいるのだから」

紫光しこうは言い、元瞳を南天門に置くと帰っていった。
元瞳は杜羽とうと言葉を交わすこともなく去った。

霊汐れいせき翎月れいげつの寝台の脇で、翎月を見守っていた。

「霊汐公主、もう朝ですよ。体に障ります。お休みに」
せきばあやは霊汐に声をかけた。

「いいえ。母上のそばにいたいの」

「あまり根を詰めれば疲れましょう。しばし私に任せてお休みになってからまたお越しください」

「ではお願い」

小福しょうふく、公主にお部屋を用意しなさい」
せきばあやは一緒に連れて来た侍女に命じた。

「母上、また明日」
霊汐は翎月に声をかけると、用意された部屋に向かった。

霊汐が部屋に着くと、すぐに景休けいきゅうが訪ねて来た。

もくよ、すぐに大がかりな普請はできぬが、いずれ宮殿を建てさせよう」
景休は言った。

「この部屋で十分だわ。気にしないで」

山霊さんれい界にある全ては公主のそなたの物だ」

霊汐は景休にお茶を用意した。

「傷はよくなった?」
霊汐は景休に尋ねた。

「ああ。そなたに会えば痛みも消える」
「人間界ではありがとう」
霊汐は頭を下げた。

「水くさいな」
りんもくだった時は事の重大さが分からなかったけど、お礼を言うだけじゃとても足りないわ」

「我らの間に遠慮は要らない」
「母上は目覚めるかしら」

「当然だ」
「よかった。5万年も引き裂かれていろいろあったけど、こうして母と会えて私は幸せ者だわ」
霊汐は微笑んだ。

もくよ、もっと幸せになれる」
「私が頼りとすべき母は病に伏せってるから、迷惑をかけるわね」

「安心せよ。主従の情は失っておらぬ。そなたに埋め合わせをしたい。翎月国主も、そして私も、そなたが失った日々を取り戻させてやりたい」

宝青ほうせいは霊汐の部屋の外で2人の会話を聞いていたが、憤って自分の宮殿に帰った。

「あの女はどこの何者なの?言いなさい」
宝青ほうせいは怒りを露わに侍女に叫んだ。

「あの方は国師に連れられ国主の寝殿へ入りました。桃林とうりん霊汐れいせきという者です。5万年前に生き別れた国主の娘だとか」

侍女は答えた。

青瑶せいよう自悟崖じごがい雲風うんほうのそばに、白狐の姿で寄り添っていた。

九宸が来たのに気付き、青瑶せいようは人の姿に戻り九宸にあいさつした。

「まだここに?」
九宸は青瑶を見た。

「はい」
「別状は?」
「毎日の雷刑に慣れるとでも?」

雲風うんほうが師匠から受けた仕置きと比べれば、朝晩の雷刑ごとき物の数ではない。石封せきふうの刑が終わるまで、千年付き添うのか」

雲風うんほうは私のせいで罰を受けました。そばにいることでしか償えません」

「こやつはそれを望んでいない。公明正大なる天君により下された裁きだ。雲風もそなたも、天兵を死なせた罪からは逃れられん。因果応報なのだ。そなたが償うべきは雲風うんほうではなく衆生であろう。楽伯らくはく医仙の弟子にして薬王洞の医官よ。その医術は九天でも称賛されておる。千年ここでむなしく過ごすのか。人間界で民を救う気もなく薬王洞にも戻らぬと?それでは雲風の苦心が無駄になってしまうぞ」

「目が覚めました。感謝します」
青瑶は九宸に頭を下げ礼をした。

「賢いそなたならいずれ気づいたろう。取り返しのつかぬ過去も受け止めよ。たゆまず善を行うことは神の本分だ。忘れるな。…雲風うんほうが静かになり私も落ち着かない」

霊汐れいせきとはもう再会を?」

青瑶は九宸に尋ねた。

霊汐れいせきはどことなく変わったようだ」

「どこが?」
「顔を合わせた時、霊汐れいせきなのかりんもくなのか分からなくなった」

「本を正せば同じ者です。人間界の好きな詩があります。“水の窮まる所に至れども雲を眺む”5万年前、ごうを終えたばかりの私も行き詰りました。ふと夜中に起きてみては人間界を懐かしみ、父や母の顔が浮かび夫を恋しがったものです。本当の家族だと思えました。たった数十年の日々で出会いと別れ、苦楽を知りささいなことに執着し一生を終えました。悔いが残っても生き抜いたと誇れます。ここにあるのは、悠久の時と変わらぬ日々のみ。あとになって悟りました。短い時でも、真心さえ尽くせば本物になると。天族でも人間でも等しく私の家族なのです。私たちは幸いにして神として生まれ、さまざまな苦しみを味わう機会に恵まれます。喜びこそすれ嘆くことはない」

青瑶は語った。

「つまり私は待つべきだと?」

「神尊でさえ戸惑う状況なのですよ。苦しみぬいて死んだりんもくは、今ここに霊汐として戻りました。きっと眠れぬ夜を過ごし心を乱してることでしょう。見守ってあげてください」

「礼を言う」
九宸は青瑶に揖礼ゆうれいし、青瑶せいようは畏まった。

赤鷩せきべつは檻に入れられている欽原きんげんに会いに行った。

「義父は?」
「死んだ」

「劣勢を一気に覆すとは恐れ入った」
欽原きんげんは言った。

「国師の策は、微に入り細をうがつ。仲昊は滅びて当然だ。宝青ほうせい公主を助けた功がなくばお前も同じ末路だった」

「上っ面の温情だ」
欽原きんげんは目をつむった。

赤鷩せきべつは良く見張るよう配下に命じ、欽原きんげんの檻を去った。

霊汐が翎月に会いに行こうとすると、宝青ほうせいが行く手を遮った。

「国主の娘?果たして本物かしら。権勢におもねる輩は多い。仲昊ちゅうこうが反乱を起こした時は現れずに今頃何の用?」

宝青は霊汐を見た。

「私は母に会いに来ただけよ」

「私がいるかぎり、あなたの出る幕はないわ」
青瑶が言うと、霊汐は帰っていった。

「ああいう方ですし、まともに相手をなさらぬよう」
道々小福しょうふくは霊汐に話した。

霊汐は大きくなった五椀ごわんに会いに行った。

五椀ごわん、傷の具合はどう?九宸きゅうしんにかけられた術を解きおおきくなっちゃって。毎食5杯どころか50杯でも足りない」

霊汐は五椀ごわんをなでた。

「公主、摘んだばかりの果物です。美味ですからどうぞ」
小福は霊汐に青い果物を差し出した。

「お前と違い霊汐公主は美味と思わぬだろう」
景休がやってきた。

「なぜ?」
火かかん族は酸味を好む。熟する前は酸っぱすぎて好んで食するのはこの者くらいだ」
小福は果物を持ってさがった。

景休は霊汐に医書を渡した。

「退屈しのぎに読むといい。…山霊界の部族はほとんどが鳥で、他とは違う医術を有するのだ。昔から興味を?」

「幼い時は父にぶたれても学ばなかった。きっと守られてたからね。よりどころは知識じゃなく父やあね弟子だったもの。おとうと弟子はがき大将で、毒虫すら私を避けた。だから勉学を怠けて気ままに過ごしたわ。興味を持ったのは人間界でよ。知識が支えになると気づいたせいね」

霊汐が話すと、景休は医書を取り上げた。

「ここでも気ままに過ごすといい。よりどころはあるのだから」
景休は霊汐に言った。

「今は興味があるの」
霊汐は医書を景休けいきゅうの手から取り、開いた。

「見て。山霊族は経脈の流れが異なる」
霊汐は医書の図を指さした。

「そなたも山霊族なのだぞ」

2人の様子を宝青の侍女が見ていた。

「国師と庭園で楽しげに語らってました。見るからにお似合いかと」
侍女は宝青の元に帰り、報告した。

「黙りなさい」
宝青は声を荒げた。

欽原きんげんは檻の中で仙術を体の中に取り込み、苦しみだした。

欽原のうめき声を聞き、看守たちが駆け付けて来た。

「国師の裁きが控えている。ここで死なせてはならん」

看守が檻を開けた時、欽原は目を見開いた。

景休の所に欽原が逃げたと言う報告が入った。

景休が檻を行き周囲を調べると、看守たちは一撃で仕留められていた。

「変わった様子はなかったのか」
景休は赤鷩に聞いた。

「すぐに追っ手を放ちます」
「必要ない。仲昊は死んだ。欽原など1匹では何もできぬだろう」

桃林では、承晏しょうあん自悟崖じごがいにいる青瑶せいようを連れ戻しに行こうとしていた。

「自悟崖に張りつきめそめそ泣くとは。我慢ならない」
承晏が行こうとするのを、花蓼かりくが止めた。

「行かないで。傷心の青瑶せいようさんに構えば返り討ちに遭うわ」

承晏と花蓼かりくがもみ合っていると、青瑶せいようが帰って来た。

霊汐が翎月の様子を見に行くと、翎月の寝台のそばに宝青がいた。

「何しに?」
宝青は霊汐を見て言った。

「お静かに願います」
せきばあやは宝青をたしなめた。

「母上に回復の兆しは?」
霊汐はせきばあやに尋ねた。

「変わりません」

霊汐は、入れ違いに帰った巫医ふいが置いて行った薬のにおいをかいだ、

「いつもあの巫医ふいが診るの?」
せきばあやはうなずいた。

「山霊族の巫医ふいは腕がいいのよ。天族の医仙よりもね」
宝青は言った。

青瑶が人間界を歩いていると、物乞いの老婆と少年が店の男性から追い出されていた。

「次にまた来たら打ち殺してやる。早く去れ」

青瑶は老婆に近寄った。

「物乞いに何の用だ。手が汚れるぞ」
男性は言った。

「おばあさん、ひどい状態です。たちの悪い病やも」
老婆の足には赤いあざのようなものが無数にある。

「いいや。人にはうつらないよ。見苦しいがね」
老婆は足を隠した。

「一刻も早く医者に診てもらわないと歩けなくなりますよ」
「食べる銭もないのに医者にかかれるもんか」

「こちらへ」
青瑶は老婆を支え立たせ、歩き出した。

「さっさとうせろ。店の前に居座るな、迷惑だ。ぐずぐずするな。性懲りもなくまた来たら脚を折ってやる」
店の男性はひどい言葉を吐き続けている。

青瑶が男性に視線を送ると、男性は話せなくなった。

青瑶は老婆を治療し、少年にご飯を食べさせた。
少年は祖母の治療が終わるまでご飯に手をつけず待っている。

「いいから先にお食べ」
老婆が声をかけると、少年は食べ始めた。

診察を終えた青瑶は処方を書くため、席を離れた。

戻った青瑶は処方を書いた紙を老婆に渡した。

「10服続けて飲めば、ほぼ完治するでしょう。…では私は失礼しますね」
老婆と少年は青瑶に礼を言い、青瑶と別れた。

「おねえちゃんがいなきゃ薬も買えないよ」
青瑶が去ると、少年はぼやいた。

「教えたはずだよ。ずっと人に頼るんじゃなく自分で何とかするんだ。この脚は長く患ってる。すぐには歩けなくなったりしないよ」

老婆が少年をたしなめていると、若い男性が近づいてきた。

「先ほどの娘さんから薬代を預かりました」
男性は老婆に巾着を渡した。

巾着の中にはお金がたくさん入っていた。

「家を買い、この子も私塾に通えます」
男性は言った。

霊汐は青瑶を山霊さんれい界に呼び、翎月を診てもらった。

「薬を調べたいわ」
翎月を診た青瑶せいようは、せきばあやに言った。

「恐れながら、毎回全て飲ませるよう巫医ふいに言われてます。
薬をご覧になるなら巫医ふいに持ってこさせましょう」

「結構よ。煎じかすか薬を入れていた器はある?」

せきばあやは小福に捜しに行かせた。

赤鷩は青瑶が招かれたことを景休けいきゅうに報告した。

「始末せよ」
景休は命じた。

青瑶は煎じかすと器を調べ、使った薬草を突き止めた。

「使われたのは、川胆草せんたんそう榕鬚肉ようしゅにく黄柳粉こうりゅうふん北疆雪蛇ほっきょうせつだの抜け殻、首烏藤しゅうとう合歓皮ごうかんひ火雲山棗仁かうんさんそうにん。私の見立てが正しければこれは追仙散ついさんせんだわ。血を補い、気を静め、経絡けいらくを整える」
青瑶は言った。

「服用後は国主の血色がよくなります」
小福は話した。

「あなたも師匠の弟子なら分かるはず」
青瑶は霊汐を見た。

「母上は撮魂さっこんの術により神魂が損なわれ、深い眠りにつき目覚めない。本来なら傷ついた心魂を養いつつ刺激薬を与え呼び覚ますわ。昏睡に陥ったままだと手遅れになる。この状況下において追仙散は毒も同じよ」

霊汐は気づいた。

「国主が目覚めると都合の悪い者がいるようね」

「一介の巫医ふいにこんな度胸はない。黒幕がいる」
霊汐はせきばあやを見た。

「急いで巫医ふいを連れてくるよう将軍に伝えなさい」
せきばあやは小福に指示を出した。

「将軍が駆け付けた時には巫医ふいは自決しており、薬の処方と治療記録も消えました」
戻った小福は報告した。

「敵方の耳目がいる。いち早く私の訪れを知り巫医ふいを始末したのよ」
青瑶は言った。

「何か知ってるの?」
霊汐はせきばあやを見た。

「いいえ」
せきばあやは母上の腹心よね。国主に仇なす者は誰なのか証しはなくとも当てはあるはず」
霊汐はさらに尋ねた。

「国主を殺せば大罪です。故なくしえ疑えば、災いを招きます」
せきばあやは答えた。

「本当に知らない?」
「知りません」
せきばあやは頭を下げた。

「私を信用してない」
霊汐は青瑶と2人になると、言った。

「当り前よ。ここは天宮と違って神界、魔界、人間界に挟まれてる。仲昊の反乱により大きな被害を受け国主が目覚めれぬ今は小競り合いが絶えない」
青瑶は話した。

天息宮てんそくきゅうに耳目を送り込み、迷わず口封じするとはやり口があくどいわ。頼るべき母は眠ってて孤立してる。相手が分かっても手出しできない。事態が悪化するだけよ」

「孤立無援なんかじゃないわ。今やあなたは上神で国師とも交友がある。助けを求めたら力になってくれるはず」

青瑶が言うと、霊汐は視線を反らせた。

「気が進まないようね。国師を疑ってるの?」

「もちろん違う。人間界では守ってくれたし、天宮に戻ったあと噂を耳にした。私が紫雲台しうんだいで刑に処され嘆いた母は国師を責めたのよ。赤子の私を捜し出せず殺させたと。その後国師の任を解き幽閉したわ。仲昊に攻め入られ、景休は民を救わんと立ち上がり、結果仙力を奪われ人間界へ逃げた。私と会った時は目が見えず傷だらけだった。あれほど冷遇されたのに仲昊を滅し母を助けたわ。そんな忠臣を疑ったりできないわ」

「ではなぜ?」

りんもくだった私を守り命珠めいじゅまでくれたのは、好きだったからよ」

「なら…」

「でも今の私はりんもくでありりんもくじゃない」

「どう接するか悩むの?」

「母を見舞ったら桃林とうりんに帰るつもりだった。でも不穏な空気が漂う宮殿に目覚めない母を残して去れないわ。でもここにいると…国師と向き合うことに」

「気持ちに応えられず、それが心苦しくて途方に暮れてる」
霊汐はうなずいた。

「悩むことないわ。今や六界の誰もが知ってる。戦神が桃林とうりんの小仙に首ったけだとね。あなたも好きなくせになぜ避けるの?神尊と一緒になれば丸く収まるわ。まだ恨んでるのね」

「一度だって恨んでない」
「でも避けてる」

「私って本当にばかよね。同じ師についたのに医術の半分も学べず、騒ぎばかり起こして迷惑をかけてる。神尊は私と出会ったせいで命まで落としかけたわ」

「あなたは悪くないでしょ」

「でもこれ以上役立たずでいたくない。“霊汐れいせきを選ぶとは神尊も見る目がない”と言われたくないの。神尊の横に堂々と並べるような釣り合う相手になりたい」

「神尊は気になさらないわ」
「私が気にする。青瑶さん、自分の運命を誰かの手に委ねるのも、自分の生死が誰かの胸三寸で決まるのも真っ平ごめんよ」

霊汐れいせきも一人前になったのね。今後誰かを頼る必要はない。私がいる。翎月国主を治してあげる。そうすれば何もかもうまくいくわ」
青瑶は霊汐の手を握った。

「ありがとう」
霊汐は青瑶の肩に頭を乗せ甘えた。

「家族なのに水くさいわね。あなたはもう上神なのに、いつになれば神尊に釣り合うの?扶雲殿ふうんでんで独り恋しさを募らせるなんて同情しちゃうわ」

「神尊は勝手すぎる。いつも私を子供扱いして相談なく決めるんだから。一度置き去りにされるといい」

「“恨んでない”なんて言ってたけど、うそだったのね」

扶雲殿の九宸きゅうしんはくしゃみをした。

「どこかお悪いのですか」
含章は九宸を案じた。

「最高の境地に達した神尊が病などに侵されるものか」
開陽かいよう含章がんしょうをたしなめた。

「なぜくしゃみを?また冷えの病が?」
含章は薬王を呼びに行こうとした。

「必要ない」
九宸は言った。

「余計なことはするな。誰かに噂された時にくしゃみが出るとか。恐らく神尊のことを、誰かが思っています」
開陽が話していると、花煙かえんが茶を持ってやってきた。

天雷真君てんらいしんくんの配下が追っているのは、赤い月の夜居所の知れぬ侍女です。扶雲殿も調べられます」
司命は九宸に報告した。

司命の話に耳を傾けていた花煙かえんは、茶を溢れさせてしまった。

「花煙、その日は?」
開陽は花煙かえんに聞いた。

「扶雲殿にいました」
花煙かえんは答えた。

九宸は様子のおかしい花煙かえんに気づいた。

十三は司命殿にいたと司命しめいが証言した。

「十三が司命殿にな」
「噂によると近く婚礼を挙げるとか。実にめでたい」
開陽と含章がんしょうは司命をからかった。

「冗談を言うな」
司命は言った。

「天宮では誰もが知っている。我らの兄弟だった十三じゅうさんは、今や身も心も完全な女となった。女をいじめるなよ」
開陽は言った。

「私がいつ十三を?」
「毎日だろ」
「ひどい言いがかりだ」

「随分と暇なのだな」
九宸は皮肉を言った。

「一人寂しく退屈なさっていると思い、話し相手になろうかと」
開陽は素直に話した。

「もしや失礼したほうが?」
含章は空気を呼んだ。

「帰れ」
九宸の一言で3人は帰っていった。

花煙かえんはそばに控えている。

九宸は花煙かえんを呼んだが、花煙かえんは心ここにあらずのようで、2度目にやっと呼ばれているのに気づいた。

「下がれ」
花煙も退出した。

「師匠は正しい。なんとも非情な女子おなごだ」
九宸は長生結ちょうせいけつを見て呟いた。

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感想

元瞳さんは杜羽とうに見送られて人間界に行った。
杜羽は本当にすごい。
きっと元夫人が自殺しておかしくなる前の元瞳げんどうさんは、美人で強くて本当にいい子だったんだろうと想像しました。

元瞳さんが本当の犯人だと分かっても、雲風上神の刑は変わらず続行なんですね。
青瑶さんは薬を使って元瞳げんどうさんに仕返しをしようとしたから、その罪は消えていないと言うことでしょうか?

霊汐は景休さんの好意を持て余しているものの、信じきっています。
人間界で色ボケだった景休さんしか知らないから無理もない。
翎月を邪魔だと思っている黒幕が景休けいきゅうさんだと知ったら、霊汐れいせきはどうなっちゃうんだろう?
そして、霊汐れいせきに知られた景休けいきゅうさんは?

司命と十三の愛は成就間近?天宮中の噂になってるそうです。
天宮の噂と言えば、神尊も桃林の小仙に夢中と噂されてると。

花煙かえんは景休さんの手の者(?)で、攢心釘さんしんていを盗んだ下手人。
花煙かえんはどうなっちゃうのでしょう?
扶雲殿の侍女3人衆の良き突っ込み役でボケもこなす。

霊汐が神尊と結婚して十三じゅうさんが司命と結婚して、花煙かえんがつかまっちゃったら扶雲殿ふうんでんはどうなる?

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