運命の桃花~宸汐縁~第40話 凶禍の兆し

運命の桃花

運命の桃花 第40話 あらすじ

九宸きゅうしんは、朱自在しゅじざい包鎖柱ほうさくちゅうを弟子にし、天宮中の人々は九宸が初弟子を迎えたことを喜んだ。景休けいきゅう宝青ほうせい危篤の報告を受け、もくのもとを去った。雲風うんほう玉梨ぎょくりとの破談を天君に願い出たが聞き入れられなかった。幽都ゆうと山に逃げ込んだ檮杌とうこつを退治するため、雲風は出陣した。青瑶せいようは雲風の身を案じ、薬を持って幽都山に向かった。

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運命の桃花 第40話 登場人物

人間界に転生した霊汐。生家を出て、桃花小築で九宸と暮らしている。
九宸天族の戦神。神尊。黙に許嫁の宋子玉だと勘違いされているが、訂正していない。
景休山霊界の国師だった。黙と人間界で暮らしている。
雲風九宸の弟弟子の上神。
青瑶霊汐の姉弟子。
玉梨薬王の娘。
宝青山霊界の国主・翎月の養女。
仲昊父の烈夷は九宸の配下だった。一族が落ちぶれ、魔君の配下となり山霊界に侵略した。
黒蚩仲昊の配下だが、実は景休が送り込んだスパイ。

運命の桃花 第40話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

妖獣が暴れ、人間界の街は大混乱に陥り人々は逃げまどっていた。

急に静かになり、朱自在しゅじざいが安心した時、双頭の妖獣が朱自在しゅじざいの背後に現れた。

九宸きゅうしんは妖獣の尻尾を掴み、投げ飛ばすと、朱自在しゅじざいにかけられていた仙術を解いた。

九宸は逃げる妖獣を追っていった。

「さっきのは神仙じゃない?」「きっとそうよ」「神仙のご降臨だぞ」

隠れて事態を見守っていた人々は飛んでいく九宸を見てざわめいた。

「あっちの神仙のほうがすごいな。弟子入りを」
朱自在しゅじざいは弟子と共に九宸を追っていった。

九宸は森に逃げ込んだ妖獣と戦ったが、胸を押さえ動きを止めた。
妖獣は逃げて行った。

朱自在しゅじざい包鎖柱ほうさくちゅうは九宸を見つけ、近寄った。

「仙師、あっさりと追い払うとはさすがです。妖怪には逃げられたようですね。仙師ならそのうちに捕まえる」

朱自在しゅじざいが九宸に話しかけていると、九宸は胸を押さえたまま倒れた。

もくの働く薬舗は、怪我をした人々が詰めかけ、てんてこまいの忙しさになっていた。

景休はもくの仕事を手伝っていたが、つなぎの鳥が現れ薬舗から姿を消した。

そこに朱自在しゅじざいが九宸をかついで入って来た。

 

景休の所に現れた鳥は赤鷩せきべつだった。

宝青ほうせい公主が深手を負い、ご危篤です」
赤鷩せきべつが報告すると、景休けいきゅうは険しい表情をみせた。

もくは九宸を家に連れ帰り看病した。

もくが九宸の汗を拭いていると、九宸のまぶたが動いた。

「宋さん、聞こえてる?目が覚めた?お粥があるから持ってくるわ」
「何日寝た?」

「3日よ。ずっと意識を失ってた。孫先生も原因が分からないって」

九宸は半身を起こした。
「あの妖獣は現れたか」

しゅ道士から聞いたわ。妖怪を退治しようとしたそうね。むちゃすぎるわ。少し腕に自信があっても、妖怪に勝てるはずがない。考えなしに立ち向かえば、けがだってするわ。命拾いしただけでも運がよかった」

「ずっと私のそばに?」
「放っておけないでしょ。もう安心ね。宋おじ様に悲しい知らせを伝えなくていい」

「それだけか。わずかでも私を案じたか。もく…」

もくが答えに困っていると、朱自在しゅじざいの声が聞こえてきた。

「仙師、お目覚めですか。お見舞いに」

「朱道士よ。出迎えてくる」

もく朱自在しゅじざい達を連れて九宸きゅうしんの部屋に帰って来た。

「仙師、お加減はいかがですか」
朱自在しゅじざいは九宸の前に進んだ。

「誰だ」
九宸が問うと、朱自在しゅじざいとその弟子・包鎖柱ほうさくちゅうは九宸の前に膝をついた。

「私は朱自在しゅじざいと申す者。清風観せいふうかんの38代目です。我が永年の宿願は、悪を除き民に幸せをもたらすこと。8歳にして霊山に入り、30年以上も修行に励みましたが、何の成果もなく…。仙師との巡り会いは僥倖でありましょう。どうか弟子にしてください」

「同じく」

2人は叩頭した。

「立て」

「応じてくださるまで立ちません」

「宋さん、朱道士は命の恩人よ」
もくは助け舟を出した。

「とんでもない。私たちがいなくとも仙師なら勝手に起き…お目覚めに」
朱自在しゅじざいは言った。

「朱道士たちに助けられなかったら、あなたは妖怪の胃の中よ。朱道士、ひれ伏さなくていい。立って」
もくが言うと、朱自在しゅじざいは少し顔を上げて九宸きゅうしんを見た。

「弟子には?」

「立て」
九宸は言った。

「師匠にご挨拶を。感謝します」
朱自在しゅじざいは九宸の前にひれ伏した。

「今は去れ」
身の回りの世話をしようとする2人を九宸は退出させた。

2人が去ると、九宸は頭を抱えた。

「何を怒ってるの」
もくは九宸に声をかけた。

「初弟子だ」

「どんなことにも“初めて”があるわ。朱道士はいい人よ。あなたを助けたうえ毎日お見舞いに来てくれた。武芸を手ほどきするくらい快く引き受けたら?」

九宸は考え込んだ。

薬王洞では、玉梨ぎょくり青瑶せいように協力を要請していた。

「とぼけたって無駄よ。利害が一致してる。雲風うんほうのことが好きなくせに縁談を邪魔しないの?青瑶せいよう、助けてちょうだい」

「何のことですか」
青瑶は歩き去るが、玉梨はあきらめず後をついて行く。

「私はだまされないわ。青瑶せいよう。そうよね、あなたを見初めた神仙は大勢いたけど、歓心を買おうとしてすげなく拒まれてた。雲風うんほうだけは特別に見えたけど?父上のお気に入りなんだし、あなたから頼んでよ。きっと父上は天君に破談を願い出るわ」

「それほど嫌ならご自分で頼んでください」

「この…。せいぜい取り澄ましてればいいわ。あとで泣いても知らないわよ」

その時、雷の音が大きく響いた。

「すごい雷ね。何かの凶兆かしら」
2人は空を見上げた。

雷は天尊山のほうから鳴り響いている。

「もしや天尊が新しい境地に至ったため天劫てんごうが下ったとか?」
天雷てんらいと共に雷を見ていた紫光しこうは推理した。

司命しめい雲風うんほうも雷の音に気付き、司命殿から出てきて空を見上げた。

「天尊山に門徒が増えた。上神が弟子をお迎えに?」
司命は雲風うんほうに尋ねた。

「私ではない」
「ならば天尊が新たな弟子を?」

「今は私のことも避ける師匠が弟子を招くものか」
「「まさか…神尊が?」」
2人は顔を見合わせた。

天尊の籠もる洞窟の壁に、“朱自在しゅじざい 包鎖柱ほうさくちゅう”という名が現れた。

「いずこの神仙だ?」
天尊は新しい九宸の弟子を想像した。

『妖獣騒ぎはまた起こる。天君に報告せねば』
九宸は天宮に戻っていった。

朱自在しゅじざい包鎖柱ほうさくちゅうは、目の前で忽然と消えた九宸を見た。

「姿を消すのも朝飯前だぞ」
「つまり師匠の師匠は神仙なのですか」

「もしくは名高い道観の高弟なのは間違いない」
「清風観じゃないのは確かです」

2人は九宸がどこの道観の者か推測しあった。

九宸は天君に妖獣のことを報告した。
檮杌とうこつが人間を襲ったと?」

「はい」

「あの妖獣がはく帝によって西方の窮桑樹きゅうそうじゅに封印され十数万年になる。なぜ今になって解き放たれ人間界で暴れたのだ?」

魔君まくんの影響があるかと」

「戦神、たかが猛獣1匹見つけたら、捕らえればよいだけのこと。天君に報告するほどの大事ではあるまい」
天雷は口をはさんだ。

檮杌とうこつは小物ですが、こたびの件は凶事の前兆やも。天地に魔気が満ち、妖獣までも我を失い人間界で暴れました。魔君まくんの覚醒と関係するなら、早めに対策を練るべきです」

九宸は進言した。

「そのとおりだ。百扇ひゃくせんよ、…開陽かいよう含章がんしょうに兵を与え、この件を調べさせよ。妖獣に異変があらば備えるべきだ。衆生を守らねば」

天君は百扇ひゃくせんに命じた。

九宸きゅうしん、近頃具合はどうだ」
命を出し終えた天君は、九宸に尋ねた。

「おかげさまで息災です」

「弟子を取ったそうだな。かたくなに弟子を拒んできたはず。どんな心境の変化が?」
「たまたまです」

「戦神は西海水君の孫さえ拒んだ。青丘せいきゅうの王子も。かい国の王子までも門前払いにした。高貴な方を追い払ってきた戦神だが、こたびはよほどの奇才と出会いを果たしたらしい。めでたい」
天雷は言った。

九宸きゅうしんよ、暇があれば弟子を連れてこい。天尊山の門徒が増えたことは天族にとっても幸いだ。新弟子に惜しみなく褒美を与えよう」
天君は九宸に言った。

「感謝を。凡俗の徒ゆえ、拝謁などもっての外」
九宸は揖礼ゆうれいした。

「戦神の弟子は平凡とは程遠かろう。出し惜しみするでない。私も天君も奪ったりせんぞ」
天雷が言うと、九宸は笑った。

司命殿には、なじみの面々が顔をそろえていた。

「神尊が弟子を取った」
含章は口火を切った。

「長年お仕えした私をそっちのけにしてね」
十三じゅうさんは不満顔だ。

「かつて海国の王が願っても王子は戦神の門下に入れなかった。同じ魚だが、王より偉いのか」
開陽は十三に言った。

「私は…」
十三が言い返そうとすると、雲風が割って入った。

「私を救うための会合であろう。いつまで無駄話を?司命しめい、案を出せ」

「私が?」
「早く」

「婚姻のめいは、あまねく告げ知らされ日取りも決まったのにどうせよと?」
「諦めろと言うのか」

「もしくはご辛抱を」
十三じゅうさんを娶らせるぞ」

「いいですよ」
十三は笑顔で雲風うんほうに駆け寄った。

「出しゃばるな」
雲風は十三じゅうさんを一喝した。

「知恵を絞りますので、しばしお待ちを」
司命は少し考え妙案を思いついた。

「いっそ、ほとぼりが冷めるまで天尊山に籠もるのです」
司命は言った。

「私も山籠もりしようと天尊山に寄ったが、師匠に先を越されており入る隙もない」
雲風はすでに試していた。

「こうなれば凌霄殿りょうしょうでんの前にひざまずき、天君に乞うのです。それでも取り消してくださらねば、柱に頭をたたきつけ決意を示しましょう」

「本気か」
含章は驚いて司命に尋ねた。

「そう見せる」
司命は答えた。

「苦肉の策です。やり過ごせる。不退転の決意を示すことが肝要です」
司命は雲風うんほうに言った。

「私は上神だぞ。宮殿の柱にぶつかる程度で死ねると思うのか」
「試しては?」
「出ていけ」
「今すぐ退出を」
司命は出て行こうとしたが、ここは司命殿だった。

玉梨ぎょくり元君のどこに不満が?外れくじを引いたかのようですが、婚姻の相手は聡明で優しく愛らしい。羨ましい」

開陽は雲風うんほうに言った。

「ならばお前が娶れ」
「娶りたくとも相手にされません」

「つまり玉梨ぎょくりに選ばれて光栄に思えと言うのか」

百扇ひゃくせんが司命殿にやってきて、含章がんしょう開陽かいように天君の命を伝えた。

「“両将軍はすぐさま人間界に下り、民を襲った檮杌とうこつの行いが魔君と関わるか調べよ”」

話を聞いていた雲風は、自分が代わりに役目を果たすと百扇ひゃくせんに直談判した。

「しかし天君からの仰せにより、雲風うんほう上神は婚礼を挙げるまで天宮を出てはなりません。両将軍は出立なされよ。一刻も早くご報告を」

百扇ひゃくせんに命じられ、2人は出立した。

もくの所に景休けいきゅうからのふみが届いていた。

しゅうにいさんは町を離れたわ。急用で故郷に戻るとふみに書かれてた」

もくは九宸に話した。

「行きずりの縁など気にかけるな」
「鉢植えの世話を頼まれたの。あなたの看病にかかりきりで、何日もふみに気づかなかった。また戻るわよね」

「未練が?」
「そうじゃない。置いていった鉢植えは一時的に預けただけ。だから取りに戻るかと」
「途切れてしまった縁は悪縁なのだ。買い物に行こう」

ついに縛霊淵ばくれいえんを開ける準備が整った。

縛霊淵ばくれいえんを開け放つ日、魔君まくんが六界を平らげるのだ」

仲昊は報告を喜んだ。

「恩主、魔気により妖獣が暴れ天界が不穏な空気におびえています。幽都ゆうと山では元瞳げんどうが偵察し、どうにも…」
黒蚩こくしは懸念事項を挙げた。

「案ずるな。赤い月の夜が訪れれば、何もかも決着がつくであろう。小娘は殺したか」

「はい」
黒蚩こくしは答えた。

「よろしい。では景休けいきゅうの探索に力を入れろ。傷だらけの小鳥であっても禍根は除くべし」

仲昊ちゅうこうは命じた。

九宸は人間界に仙体を置いて、元神げんしん(肉体を超越した命の精髄)の状態で扶雲殿ふうんでんに帰った。

雲風うんほう観雲殿かんうんでんで酒を飲んでいた。

「昼間から酒を?」
「驚きました。九宸さん、酒は時を選びません。洞府どうふが立ち並ぶ天宮を元神げんしんで歩き回るなんてさまよう魂として捕らえられますよ」

「任務だ」
「そうだと思いました。何ですか」

「あの日、天息宮てんそくきゅうに異常はなかったな?」
「はい」

景休けいきゅうは?」
「言いましたよ。重罪を犯し幽閉されていました。そのせいか国主は私に冷たく、まつりごとへの口出しを嫌がった」

「幽閉された者がなぜ人間界へ?」
霊汐れいせきの隣にいた男が?」

「国主の言動が伴わぬのは隠し事のためだ。山霊さんれい界に何かあった。景休が人間界に居座るのも合点がいく」
「確かにそうですね」

もくは九宸の部屋に入ってきた。

「今日の体調はどうかしら」
もくは九宸に尋ねるが、返事がない。

「宋さん?どうしたの?」
もくは座ったまま微動だにしない九宸に近寄った。

 

景休けいきゅうの留守は長期に及ぶ。霊汐と会った時、深手を負い目も見えなかったようだ。通常ではありえない。何かしら異変があったのだ」

九宸は雲風うんほう観雲殿かんうんでんで話している。

「現在、山霊さんれい族と天族は折り合いが悪く、救いを求められるまで天君は動かぬでしょう。私が再び山霊さんれい界に行けば、争いの火種を生むのでは?」

「私とお前は表に出ない。下界の小仙を山霊さんれい界へ送り、ひそかに探らせよ。単なる内乱ならよいが、魔族が関わっておれば山霊さんれい族だけの問題ではない」

九宸は雲風うんほうに命じた。

「お帰りになったこの機に相談に乗ってください」
「聞こう」

「縁談がどうしようもなくせっぱ詰まっています。景休国師のことより危急の事態です。婚礼の日は近いのに、天君は私に会ってもくれません。私にはすでに心に決めた女子がいます。こういう場合、普通は親に泣きつきますが、私には九宸さんと師匠だけが頼みの綱なんです。この事態を打開できるのはあなたしか…」

『宋さん?どうしたの』
もくの声が九宸の耳元で響いた。

「九宸さんが唯一の頼りです」
雲風は九宸にすがった。

九宸はもくの所に帰っていった。

「まだ話は終わっていません」
雲風の悲痛な叫び声が観雲殿かんうんでんに響いた。

「困ったわ。病には見えないけど…。妖怪に体を乗っ取られた?」
もくは九宸の前に座り、顔を覗き込んでいた。

「診てもらおう」
もくそん医師を呼びに行こうとした時、九宸が体に戻りもくの腕を引いた。

「気づいたの?」
「何事だ」

「いくら呼んでも返事がなかった」
「熟睡を」

「寝てたの?座って?」
「あれは高度な修行法なのだ。用でも?」

「3日ぶりに勤めに出ようと思って。あなたの様子を見に来たの。少しは元気になった?」
九宸はうなずいた。

「なら薬舗へ行くわね。鍋の中にご飯がある。…ゆっくり休んで」
もくは出かけようと扉に向かった。

霊汐れいせきはか弱いが善良で自分より弱い者を助けたがる』
ふと雲風うんほうの言葉が九宸の脳裏によぎり、九宸は咳をする真似をした。

「どうしたの、ひどい咳よ」
もくは九宸に駆け寄った。

「恐らく、あの日臓腑を傷つけられ…」
九宸は口を手で押さえた。

「薬を飲み続けないからよ。座って。薬を煎じてくるわ」

もくは九宸を寝台に座らせると、部屋を出て行った。

もくは九宸の衣を作ろうと、物差しを捜していた。
洗濯しようとした九宸の衣は破れていて、繕うより作り直した方が早そうだったからだ。

九宸は、採寸のため物差しを捜しているもくに事情を聞いた。

『恋は論じ合うものではない。“大胆かつ厚かましい”これで全てうまくいく』
雲風のアドバイスが九宸の頭にはある。

「方法がある」
九宸はもくに言った。

「どんな?」
「こうしろ」
九宸はもくの前に立ち、黙の手を自分の腰に回した。

「こんなのだめよ」
もくは慌てて体を離した。

「衣を作るのだろう?採寸を」
九宸はあきらめず、黙の手を取り自分の体に回した。

「宋さん、もう測ったから離れて」
もくは俯いている。

「袖の長さは?」
「だいたい分かるわ」

「袖が短ければ着られたものではない。測れ」
九宸は腕を伸ばした。

もくは躊躇いながらも、自分の手を物差し代わりにして九宸の腕の長さを測った。

「夫婦なら当然だ。夫は畑を耕し、妻は布を織る」
九宸が言うと、もくは体を離した。

「測ったか」
もくは小刻みにうなずいている。

「長さは?」
もくは答えられない。

「忘れてどうする。もう一度だ」
「からかってる?」
「測れ」
九宸は腕を伸ばし、もくは測り始めた。

雲風は念願かなって天君に会うことができた。

「本日は勅命を賜りたく参りました」
「聞かずとも分かっておる。玉梨ぎょくりとの婚姻は決まったことゆえ、白紙になど戻せぬぞ」

「私の心に玉梨ぎょくりが入る隙間はありません。取り持つ相手が違いますよ」

「雲風よ、その言い訳はすでに聞いた。二度とその手は食わん」

「そうではなく…」
雲風が説明しようとした時、下界で檮杌とうこつが暴れまわり幽都ゆうと山に入ったとの報告が入った。

幽都ゆうと山か」
天君は神妙に呟いた。

「今は元瞳げんどう上仙が守っています」
百扇ひゃくせんは報告した。

檮杌とうこつの捕縛は私にお任せを」
雲風は天君の前にひざまずいた。

「我が雲風上神はいつから働き者になったのだ」

「ご指導の賜物です。長らく政務をおろそかにし、身勝手だった雲風は、今こそ天君と悩みを分かち合います」

「雲風よ、私を案じて申し出るのか。これ幸いと恩賞をねだる気ではないのか」

「天君を案じてのことです。もちろん、無事役目を果たした暁には恩賞を頂戴するのもやぶさかではありません」

「分かった。ならば何が起こっているか見てこい。百扇ひゃくせんも共に足を運ぶのだ」

天君に命じられ、2人は出かけて行った。

青瑶は天宮を歩いていて、雲風うんほうが兵の前で話しているのを見た。

「こたび相手にするのは何だと思う。檮杌とうこつだ。気をつけるべき点は?」
「ご教示ください」

檮杌とうこつは聞く耳を持たず、善悪を分別しない。虎によく似た姿だが、人の顔を有している。残忍な性格で、8尺もの長い尾と、鋭く大きな牙を持つ」

雲風は階上から青瑶せいようが見ているのに気づいて、青瑶せいようを見上げ、2人は見つめ合った。

「雲風上神、まだ話の途中ですぞ」
百扇ひゃくせんに言われ、雲風うんほうは兵に向き合った。

「とにかく、今のことを念頭に置き、戦うのは私に任せてお前たちは命を大事にしろ」

話を終えた雲風うんほうは、再び階上を見上げたが、もう青瑶せいようはいなかった。

 

青瑶が薬王洞に帰ると、玉梨ぎょくりが待っていた。

「何用ですか」

「用事はない…と思いきや、夫となる雲風上神を見送りに行くわね。魔の討伐に行くらしいけど、幽都ゆうと山にいるのは魔君でしょ。魔君まくんの封印には、かつて戦神ですら命を落としかけた。雲風なら死ぬわね。嫁入り前なのに寡婦になってしまう。せめて見送らなきゃ。もしかしたら、これが最後の別れになるかもしれないもの」

玉梨ぎょくりはそれだけ言うと、部屋から出て行った。

『とにかく、今のことを念頭に置き、戦うのは私に任せてお前たちは命を大事にしろ』
先ほどの雲風うんほうの言葉を青瑶せいようは思い起こし、棚から薬を取り出した。

幽都ゆうと山に入った雲風うんほう百扇ひゃくせんを、元瞳げんどうが出迎えた。

檮杌とうこつは?」
雲風は元瞳に尋ねた。

「峡谷にいますが、正確な位置は不明です」
幽都ゆうと山を守る将のくせに獣の位置も分からんのか」

「お言葉ですが幽都ゆうと山は終日魔気に覆われた地です。私は将とは名ばかりの密偵にすぎず、仙力とて微々たるものです。醒神丹せいしんたんなしでは理性を失い魔道に落ちるでしょう」
元瞳は言った。

「開き直ったな。百扇ひゃくせん、お前はここに残れ」

雲風は兵を連れ幽都ゆうと山に入っていった。

元瞳は百扇ひゃくせんを天幕に導いた。

「手を貸さなくてもよいのですか」
天兵は元瞳げんどうに尋ねた。

「上神たる方が妖獣退治に助けを要するものか」

元瞳が空を見上げると、青瑶せいようが飛んでいた…。

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感想

黙は、妖獣と戦い傷を負って帰ってきた神尊を家に連れて帰り看病しました。
多分エイリアンの見過ぎなのですが、私だったらそんな人家に入れるの怖いです。
妖獣が乗り移ってるかもしれないじゃないですか!?

普通に考えて、人間が妖獣に勝てるわけない。
それなのに帰ってきた。その人に妖獣乗り移ってない!?と。
黙は本当に優しいです。

神尊が初弟子を迎えられました。

朱自在しゅじざい包鎖柱ほうさくちゅうが出てきたとき、赤い字で名前が表示され、重要人物であることが示されました。
あれ以来、どんな重要な役割を果たす人物なんだろうとわくわくしていました。

見てきた印象ではポンコツっぽいなぁと。
それが、まさかの神尊の初弟子です。

今までどんな高貴な方からの弟子入り志願も断っていたらしい神尊が、ポンコツな人間の師匠になりました。

黙の近くでは、神尊は宋子玉そうしぎょくとして行動しなければならなかったから、断り切れなかったようです。
朱自在しゅじざい包鎖柱ほうさくちゅうにとっては、すっごくラッキーでしたね。
天宮の人々の反応にウケました。

檮杌とうこつは、永遠の桃花にも出てきていました。
神芝草しんしそうのある洞窟に4頭の猛獣がいたのですが、その中の1頭です。
●●の●●を●●した猛獣です(とんでもないネタバレなので一応伏せました)。

神尊が雲風上神のアドバイスに従って、ものすごくグイグイ来てます。
いいぞ、もっとやれ!

今回40話で、全60話ですので、2/3が終わりました(; ・`д・´)
DVDなら、21話~40話が2巻で、41話~60話が3巻です。
最初は全60話って長いなぁと思っていましたが、時間が経つのは早い!

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