運命の桃花~宸汐縁~第37話 見知らぬ男

第37話 見知らぬ男運命の桃花

運命の桃花 第37話 あらすじ

魔君は霊汐れいせきの居場所を突き止め、仲昊ちゅうこう黒蚩こくしを送った。もくはついに桃を食べ、耳が聞こえるようになった。九宸きゅうしん桃花小築とうかしょうちくにやってきて、黙が男と暮らしているのを知った。景休けいきゅう九宸きゅうしんは互いに相手がだれか知らぬまま、静かな戦いを繰り広げていた。玉梨ぎょくりは九宸の居場所を知りたくて、雲風うんほうにつきまとっていた。

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運命の桃花 第37話 登場人物

人間界に転生した霊汐。生家を出て、桃花小築で景休と暮らし始めた。
九宸天族の戦神。神尊。黙に宋子玉だと勘違いされているが、訂正していない。
景休山霊界の国師だった。黙と人間界で暮らしている。
黒蚩景休が仲昊に送ったスパイ。
仲昊九宸の配下だった烈夷の息子。魔君に忠誠を誓った。
玉梨薬王の娘。
雲風九宸の弟弟子の上神。
十三元は鮫人族の男だった。扶雲殿の侍女。
関おばさん黙に仕事や見合いを紹介してくれた親切な(お節介な?)女性。
孫医師黙の働く孫記薬舗の医師。

運命の桃花 第37話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

「今後そなたを守りたい」

景休けいきゅうもくに伝えると、黙は考え込み、ハッとして景休を見た。

「私は聞こえない」
「だが見えなかった私をそなたは嫌わなかった」

「話が別よ」
「どう違う」
「私には許嫁がいるの。もう婚約してる」

「黙よ」
しゅうにいさん、目が治ったのなら休養は終わりよ。私たちはたまたま出会い身を寄せ合っただけ。しゅうにいさん、官吏になるような人が私とじゃ釣り合わない」

「ばかだな」
「おなかがすいたから早く帰ろう」
黙は歩き出した。

天息宮てんそくきゅうでは玉座に仲昊ちゅうこうが座っている。
仲昊は欽原きんげん黒蚩こくしを呼び出した。

霊汐れいせきの居場所を魔君がつかんだ。南東へ700里先だ」
「向かいます」

黒蚩こくしが名乗り出ると欽原も同行を願い出た。
仲昊ちゅうこう黒蚩こくしに任せた。

九宸きゅうしんが執心する女ゆえくれぐれも気を抜くな。罠に注意せよ」
仲昊ちゅうこうは命じた。

夜、景休はもくの部屋を見上げていた。

『私には許嫁がいるの。もう婚約してる。…しゅうにいさん、目が治ったのなら休養は終わりよ。私たちはたまたま出会い身を寄せ合っただけ』

景休の頭にはもくの言葉が響いていた。

桃花小築とうかしょうちくに忍び込んだ賊に景休は仙術を放った。

「国師」
黒蚩こくしは胸を押さえながら景休の前にひざまずいた。

黒蚩こくしか」
景休は忍び込んだ相手に気づいた。

朝食の準備ができ、もくは景休を呼びに行ったが、景休の部屋は綺麗に片付けられており景休けいきゅうはいなかった。

景休は海辺で黒蚩こくしと話していた。

「疑い深い仲昊ちゅうこうのもとで忠臣を装い続けるとは。褒めてやる」
「お指図に従ったまでのこと。かつて国師に救われた命ゆえ、いかようにもお使いあれ」
黒蚩こくしは仲昊の前にひざまずいた。

宝青ほうせいの様子は?」
「お元気でいらっしゃいます」

「甘やかされて育ったゆえ世間知らずだ。よく面倒を見よ。…こたび私に報告すべきことでも?」
「いいえ。仲昊に命じられ仙女を捜しに来ました」

「仙女だと?」
赤鷩せきべつの話によると、国師を幽閉した翎月れいげつの生き別れた娘だそうで。どう扱うべきですか」

「誰の娘かはさておき仲昊に渡す気はない。お前が仲昊ちゅうこうの陣営にいれば魔君の野望を防げる。天下安寧のため幽冥ゆうめい門を開けさせるな」

「仰せのとおりに。もともと仙女を見つけてもどこかに隠し、ご指示を仰ぐつもりでした」
「その必要はない。この私が仙女を奪わせまい。手ぶらで戻るお前を仲昊ちゅうこうは怪しむのでは?」

「何とでも言い逃れできます」
「戻るがいい。魔族の大軍を阻止せよ。仲昊のそばでは用心を怠るな」

「はい。ご安心ください。赤い月の夜までどうか御身をお大切に。山霊さんれい界にてお帰りを待っています」

天雷てんらいは天君に会いに行った。

神農鼎しんのうていを持ち出した九宸きゅうしんはおとがめなしですか」

天雷てんらいよ、この件を蒸し返すな。私は承知の上だ。神農鼎の代わりに女媧石じょかせき鎖妖塔さようとうの大妖を鎮めている。ならば天宮は安泰だ。九宸が神農鼎を使うのは理由あってのこと。使い終われば返すだろう」

「ですが…」
「言うな。この話はここまでだ。民の不安を招くゆえ触れ回ってはならぬ。天雷、答えてくれ。この件は誰から聞いた?」

天雷は口をつぐんでいる。

「そなたと九宸はどちらも天宮の重鎮だ。私は同じように信頼しておる。そなたと九宸を反目させ得をする者がいるのだ。決して踊らされるな」
「はい」
天雷てんらい揖礼ゆうれいした。

元瞳げんどうは落ち着かない様子で天雷てんらいの帰りを待っていた。
天雷の姿が見えると、元瞳げんどうは駆け寄った。

「天君は何と仰せに?」
「この件に関わらぬよう言われた」
「なれど…」

言葉をつづけようとする元瞳を、天雷は遮った。

「お前は天宮を離れろ。幽都ゆうと山にて衛兵を率いるのだ」
元瞳は目を見開き呆然と天雷を見つめている。

「はい」
しばらくして元瞳は答えた。

桃花小築とうかしょうちくでは、桃の木から落ちた桃で小白しょうはくが遊んでいる。

「食べ物で遊んじゃだめ」
もく小白しょうはくに教えると、桃を拾った。

黙は台所で火の番をしながら、桃を洗って食べた。
黙がかじるたび、桃は淡く光った。

すると、パチパチと火の燃える音や風が木の葉を揺らす音、鳥のさえずりが聞こえてきた。
黙は呆然として首に手を置き、「私は…」と言ってみた。

「どうして」
黙は呟いた。

黙が外に駆け出ると、九宸きゅうしんがいた。
宋子玉そうしぎょくさん?宋さん、なぜここに?」
黙は九宸に尋ねた。

もくよ」

「もう一度呼んで」

黙は手に桃の実を持っていた。

「黙…」
黙は九宸に顔に近づけた。
「黙」
九宸はさらに呼んだ。

「宋さん、私…聞こえるわ。さっき料理してた時、どうしてだか聞こえるようになった」
黙は泣きながら笑っている。

「よかった」
九宸も笑顔になった。

九宸は黙の涙を指で拭った。

「あの、宋さん…」
九宸は黙を見つめている。

そこに景休が帰ってきた。

黙は景休に気づくと九宸から体を離し、景休に駆け寄った。

「耳が聞こえるのよ。治らないと言われたのに。突然聞こえるようになった」
黙は景休に喜びを伝えた。

「よかった。善良な黙に天が目をかけたのだ」
景休は九宸を気にしつつ、黙に言葉をかけた。

九宸は近づいてきている。

「私もうれしいぞ」
九宸は2人の間に入った。

「空腹なら一緒に食事しましょ」
黙は九宸に言った。

「そうだな。食べよう。日が落ちる前に客人を見送らねばならない」
景休はもくに同意した。

「帰る気はない」
九宸は景休に言った。

「黙、私のことを伝えていないのか」
九宸に言われ、黙は景休に紹介した。

しゅうにいさん、父の友人の息子さんで宋子玉そうしぎょくさんよ。とても頭がよくて武芸もできる」
「本当に?それはすごい」
景休は九宸を見た。

「他には?」
九宸は黙を促した。

「前に知り合って…」
「前に?」
黙はうなずき、うつむいた。

「婚約した」
黙はうつむいたまま話した。

「ところでそちらは?」
九宸は景休を見た。

しゅうと申す。黙との出会いは遅いが、浮世をさすらう者同士身を寄せ合ってきた。それだけの間柄だ」
景休はもくに近寄った。

黙は九宸と景休に囲まれるようになった。
困った末、黙は「食事を運ぶわ」と言って逃げようとした。

「「手伝おう」」
九宸と景休の言葉が重なった。

「大丈夫よ。1人で運べる」
黙は台所へ向かい、景休と九宸はお互いを見た。

食卓の上に料理が並んでいる。
黙は最後の料理を運んできて席についた。

「宋殿、楽にしてくれ」
景休はご飯をよそい、九宸に差し出した。

「居候のわりに遠慮がない」
九宸は言った。

「そうかな。このほうが黙は喜ぶ。遠慮がない分、距離は縮まるだろう」
景休は言った。

小白しょうはくも椅子にお行儀よく座っている。

「たくさん食べてね。今日の肉料理はうまくできた。味を見て」
黙は2人に声をかけ、食事が始まった。

黙が肉料理を箸で取ると、2人がサッと茶碗を差し出した。
黙は悩んだ末、大きく体を乗り出し対面にいる小白の器に肉料理を置いた。

小白しょうはく、とってもおいしいわよ」
小白しょうはくは、九宸の方に器を鼻で押しやっている。

九宸が箸で肉を小白しょうはくの口元に運ぶと、小白しょうはくは肉を食べた。

小白しょうはくは不思議ね。しゅうにいさんに懐かず、来たばかりの宋さんの顔色をうかがってる」
黙は小白の様子を見て言った。

「賢い小白しょうはくは善悪を見分けたのやも」
九宸は言った。

「互いに悪賢く気が合うのだ」
すかさず景休けいきゅうは応戦した。

「冗談がうまい」
黙は冗談にしようと頑張った。

「どんな勤めを?」
九宸は景休を見た。

「商いだ」
「商人には見えない」
「宋殿も書生には見えぬぞ」
「何に見える?」

「力強い身のこなしに迫力ある声と活発な目遣い。明らかにただ者ではない。その姿はあたかも町で見かけた肉売りだ」

景休が言うと、黙はむせた。

しゅう殿も腹黒い商人らしくない。よい男ぶりで弁舌が立ち風格さえ感じられる。どこをどう見ても江湖こうこを渡り歩く悪党だ」

「名家の子息ともなると口達者だな。官界での栄達を求めよ。こんな所で寄り道をすることはない」

「この世に生まれたからには一事を成すべきだ。しゅう殿には輝かしき前途がある。ここで埋もれるな。場違いな者は早々に立ち去るがよい」

九宸が言うと景休は微笑んだ。

黙は2人が舌戦を繰り広げている間も食事をしていた。

「ごちそうさま。ごゆっくり」
黙は食事を終え、部屋から出ていった。

景休と九宸は部屋に2人きりになった。

「目の前にいる者が誰か分かっておらぬようだ」
景休は言った。

「それはお互いさまだろう」
「いずれ分かる。ごゆるりと」

泊まることになった九宸に黙は部屋を用意し、布団を運び込んだ。

「寒くなったし、厚い布団を持ってきた。枕は干したからふかふかよ。必要な物があれば言ってね」

布団を寝台に敷いている黙に近づき、九宸はおもむろに黙の髪に触れた。

黙の右耳の後に赤い魔印があるのが見えた。
黙は驚き、作業を止め九宸を見た。

「どうしたの?」
「何も必要ない。ただ知りたい」
「何を知りたいの」

「あの男は何者なのだ。2人の関係は?なぜ共に住んでいる。そなたは私の許嫁なのだぞ」
九宸は黙に迫った。

「私が家を出たことで、婚約は白紙に戻った」
黙は九宸に背を向けた。

「家を離れても私たちの縁は切れない」
「でも…」
黙が振り返ると、九宸の真剣な顔があった。
「でも…」
黙は視線を伏せた。

「力になろう」
九宸は黙の首に触れ、魔印を消した。黙は九宸を見つめた。

「宋殿、何の真似かな?」
景休がやってきた。

「何もない。用でも?」
「明かりを持ってきた」

景休は九宸に燭台を差し出した。

「黙はもう遅いゆえ休め」
「そうね」

黙が部屋から出て行こうとすると、九宸が呼び止めた。

「おやすみ」
黙は九宸に礼をして部屋から出ていった。

景休はもくの後を追いかけ呼び止めた。

「やつが怖いか。婚約を交わした相手だろう。よいか、無理やり連れていかせやしない」

景休はそれだけ言うと去っていった。

宋子玉そうしぎょくさんは人が変わったみたい」
部屋に帰った黙は呟いた。

黙の部屋には小白しょうはくがいた。

「どうしてここに?お前と遊ぶ気分じゃないの。一緒に寝る余裕もない。外で眠ってくれる?」
黙は小白しょうはくを部屋の外に出した。

小白しょうはくは黙の部屋の扉に爪を立て、開けてほしそうに鳴いたが扉は開かなかった。

九宸は苦しそうに胸を押さえ膝をつき、部屋で修養していた。

景休の弾く琴の音が九宸の部屋に聞こえてきた。

景休は音と共に仙術を放ち、九宸は飲もうとしていた茶をこぼした。

九宸も仙術を放ち琴の弦を切った。

小白しょうはくは部屋の隅に隠れ、震えていた。

黙も眠れぬ夜を過ごしていた。

翌朝、九宸が部屋から出てくると、景休が庭にいた。
景休の腕には鳥がとまっている。

小白しょうはくは2人から逃げるように家の中に入っていった。

「どうしたの?」
黙は小白しょうはくに声をかけた。
「おはよう」

景休と九宸はもくに朝の挨拶をした。
「粥を作ってくる」

もくは気まずそうに立ち去った。

「手伝おう」
景休も台所に行き、料理を手伝っている。

九宸が仙術を使い、黙が景休に水をかけた格好になった。九宸はニヤリと笑っている。

「ごめんなさい。着替えないと風邪をひくわ」

「では着替えてこよう」

「子供だましだ」
部屋に向かう途中、九宸とすれ違いざま、景休は言った。

「手伝おう」
九宸は景休の代わりに黙を手伝った。

「招かざる客か」
九宸は調理している黙に声をかけた。

「ただ思っただけ。宋さんは以前と感じが違うみたい」
「そうか?そなたも昔とは変わった」

「昔って?」
黙は九宸を見つめたが、九宸から答えはなかった。

「刃物の切れ味が悪いと手間がかかる。すっぱりと断ち切るには力を込めるしかない。何でも一緒くたにせず分かつことが大事だ」人との関係にもけじめをつけねばならない」
九宸は話した。

しゅうにいさんはただの友人よ。あなたは誰より才能があるし、家柄がよく出世の道も開けてる。比べて私はりん家の実子じゃなくて養女でしかない。昨日までは耳も聞こえなかった。なのに宋さんはこんな私をはるばる訪ねてきた。どうしてなの?」

「そなたの力になりたいのだ」

「私がなぜ家を出たのか何もかも知ってるはず。私の存在が家族を危険にさらした。私はここで心静かな日々を送りたいの」

「いつか私の気持ちが分かるだろう。粥ができた。器によそう」

朝食の席には、景休、九宸と小白しょうはくが座っていた。
黙の姿はまだない。

「何者だ」
九宸は景休に言った。

「お前こそ」
りんもくの許嫁だ」
林黙りんもくの運命の相手だ」

九宸が卓に箸をおくと、卓が凍り付いた。

景休は氷を溶かし、仙力で作った鳥を九宸に向かって飛ばした。
九宸は鳥を払いのけた。

小白しょうはくは逃げていった。

「小鳥の分際で威嚇するか」
「私に盾つくとは、どこの野山から来た妖怪だ」

もくの来る気配がして、2人は一時休戦した。

もくはおかずを食卓に並べると、「饅頭マントウを持ってくる」と言って部屋を出ていった。

「見逃すゆえ去るがよい」
九宸は元神げんしんを離脱させ、言った。
あたかも九宸は静かに座っているように見える。

「お前が去れ、弱い者いじめは好かん」
景休も同じように元神を離脱させた。

2人は元神げんしん同士で戦い始めた。

「数万年修行した私に対しいい度胸だ」
九宸は言った。

「年齢だけならお前の勝ちだ」
「怒らせたいのか」
「態度に示さぬだけ感謝せよ」

もく饅頭マントウを持ってきたため、2人は元に戻り微笑んだ。

「食べましょ。2人で何を話してたの?」
もくも席に着いた。

「“なんとも食欲をそそる香りだ”と」

景休が言うと、九宸も同意し、もくは微笑んだ。

「それなら遠慮せずに食べてね」

食べようとすると、食卓が真っ二つに割れてしまった。

もくが仕事にいこうと門を出ると、景休が待っていた。

「勤め先まで送っていく」
「1人で行くからいい」

「ならば宋殿と残って親交を深めよう」

「やっぱり送ってちょうだい」

2人は歩き出した。

「宋殿とは本当に婚約していたのか」

もくはうなずいた。

「私がいては迷惑になる。そのうち出ていこう」
景休は話した。
「でも目が治ったばかりよ。薬を飲ませるよう孫先生に言われた」

「大丈夫だ。案ずるな。苦労には慣れておる。また見えなくなっても、その時はその時だ。そなたには迷惑をかけたくない」

「すぐに出ていかないで。頼れる身内はいる?」

2人が話しながら歩いていると、急に雨が降り出した。

雨は景休の上にだけ振っているので、もくは驚いている。

「傘を持ってきたぞ」
九宸はもくに傘をさしかけた。

「修殿は濡れた衣を着替えに帰れ」

「そうして」
黙も景休を帰るよう促した。

景休の上には今も雨が降り続いている。

「大丈夫だ」
景休は言った。

「風邪をひくぞ」
九宸はもくと一緒に職場に向かった。

景休は仙術で雨を消すと、「子供だましだ」と呟いた。

もくが九宸と共に薬舗に着くと、かんおばさんが出てきた。
もくかんおばさんに許嫁だと話した。

「身寄りがないんじゃなかったの?」
かんおばさんは驚いている。

「家を出ただけで家族はいます」

「訳が分からない。どうして家を出ることに?」

かんおばさんが身の上話を求めるのを、そん医師は止めた。
「無理に問い詰めるな。許嫁が現れたということは、あの同居人は出ていったのか」

「いいえ」
もくはうつむいている。

もくよ、今私の声が?」
「聞こえました。実は耳が治ったんです」

「本当に?いつから?」
かんおばさんは嬉しそうに身を乗り出した。

「昨日、急に聞こえました。…孫先生、なぜ治ったのか分かりますか」

そん医師はもくを脈診した。

「どんな理由でもいいわ。神様に感謝します」
かんおばさんは拝んでいる。

「己の腕前が恐ろしい」
そん医師は自画自賛したが、「いつ治療を?」とかんおばさんが突っ込みをいれた。

「私は何もしておらん」
そん医師は気付いた。

「きっと神仙がもくの優しさに心を打たれ、生まれつきの病を治したんです。でしょう?」
かんおばさんは場をまとめた。

玉梨ぎょくり扶雲殿ふうんでんにやってきて九宸に会いに行こうとしたが、十三じゅうさんが玉梨の行く手を阻んだ。

「神尊は?」
「留守です」

「どこへお出かけに?」
「知りません。聞けるもんですか」

「じゃあお帰りを待つわ」

玉梨ぎょくりは微笑み十三の脇を通ろうとしたが、十三は玉梨の前に立ちふさがった。

「よそ者を入れぬよう命じられてます」
「私がよそ者?」
玉梨は不満顔だ。

「これは失敬。玉梨元君は疫病神でしたね。霊汐れいせきを破滅させてまだ足りぬと?」

「元瞳が勝手に密告したのよ」

「丁重に扱われたいなら扶雲殿を避けるべきね。懲りずにまた来たら容赦しないわ」
2人がやり合っていると、雲風うんほうが奥から出てきた。

「騒々しくて目が覚めた」
雲風は伸びをしている。

「雲風上神、神尊はどこに?」
玉梨ぎょくりは雲風に尋ねた。

「知らん。私も捜している」

おとうと弟子なら行き先は分かるはず」
玉梨ぎょくりは雲風の後を追いかけていった。

雲風は玉梨を追い払おうとしているが、玉梨ぎょくりは諦めず雲風の腕をつかんだ。

「手を離せ。はしたない」
「神尊に会わせてくれるならつきまといません」

「会ってどうする」

「冷えの病に効く丹薬を差し上げたいんです」

「九宸さんの病は治った。気遣いは無用だ」

雲風は逃げたが、玉梨ぎょくりは雲風の前に回り込み通せんぼした。

通りかかった2人の宮女は2人の姿を見て噂している。

「気位の高い元君が雲風上神にひれ伏している」
「娶り、嫁ぐのは人も神仙も同じこと。元君も嫁入りするお年頃よ」
「恋心は報われないやも。上神は青瑶せいよう医官に熱を上げてるから。玉梨元君に勝ち目はないわ」

宮女がうわさしているところに、玉梨ぎょくりの父である薬王が通りかかった。

薬王は2人の噂話を立ち聞きした。

宮女は薬王に気づき、慌てて立ち去った。

薬王は玉梨ぎょくりと雲風の姿を見ている。

「男を追いかけまわせばよからぬ噂が立つぞ」
雲風は玉梨に忠告していた。

「言わせておきます」
「私が好きなのか?」
「私は…」
玉梨ぎょくりは言いよどんだ。

「決まりだな」
雲風は隙を見て逃げていった。

玉梨ぎょくりは雲風の後を追いかけた。

薬王は2人の姿を見て考え込んだ。

もくを送り届けた九宸が桃花小築とうかしょうちくへの道を歩いていると、景休が待っていた。

「好き合う私ともくの仲を裂かないでもらいたい」
景休は言った。

「それは許嫁の私が言うことでは?」

「許嫁とは笑わせてくれる。もくをだますため、宋医官の息子に成りすましたな?」

「野に戻った方が身のためだぞ。人に化けてまで俗世に居座ることはない」

「話は終わりだ。あとは力で語るのみ」

2人は見合った…。

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感想

ええと。ええと。まさかこんなことになるとは思ってませんでした(≧▽≦)
完全なるコメディパートですね!?

ついに、ついに黙の耳が聞こえるようになりました。
黙が初めて聞いた声は、九宸の声でした(≧▽≦)
よかったね。本当に良かった。

黙に子玉しぎょくさんだと誤解されても、今まで神尊は訂正も肯定もしていませんでした。
だけど今回は「そなたは私の許嫁なのだぞ」なんて言ってしまっています。
許嫁顔で景休に対応しています。

しかし、景休さん。
黒蚩は命懸けでスパイしてると思うんです。
仲昊って精神が安定してなさそうだから、急に殺したりしそうじゃないですか。
そんな人の側にいるのは怖いと思います。

黒蚩がそんな怖い思いをしながら一生懸命働いている間、景休さんはラブコメを繰り広げている。
黒蚩や赤鷩は予想していたでしょうか。
彼らの国師がこんなことになっているなんて。

景休さん、黙、孫医師が3人で話し合えば、桃がすごいってことに気づきそうですけど、難しいですね。
関おばさんは、神仙が黙の耳を治したと見抜きました。
さすがです。

雲風上神と玉梨ちゃん。
宮女たちの噂を聞いて、薬王何かしないですよね?
余計なことしないでくださいね。
雲風上神は青瑶さんのなので。
変な誤解しないでくださいね。よろしくお願いします。

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