運命の桃花~宸汐縁~第34話 恋しい気持ち

第34話 恋しい気持ち運命の桃花

運命の桃花 第34話 あらすじ

もくそん医師の薬舗で雑用として働くことになった。家に帰る途中五椀ごわんを見つけたもくは家に連れて帰り、小白しょうはくと名付け飼うことにした。十三じゅうさん元瞳げんどうに対する怒りが収まらず、殴り込みをかけた。元瞳に傷を負わせ、元家の祠堂を壊した十三は鞭打ちの刑を受けた。黙は孫医師の弟子が間違った薬草を処方しているのに気付いた。孫医師は黙に知識があることを知り、黙を医師見習いにした。

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運命の桃花 第34話 登場人物

人間界に転生した霊汐。生家を出て、桃花小築で景休と暮らし始めた。
九宸天族の戦神。神尊。霊汐の魔気を浄化しを生き返らせるために、霊汐を人間界に送った。
景休山霊界の国師だったが、視力を失い仙力を封じられ黙と暮らしている。
司命人間の運命を司る神仙。
十三元は鮫人族の男だった。扶雲殿の侍女。
花煙元は人間だった。扶雲殿の侍女。
元瞳兄が魔道に落ち、没落した元家の生き残り。
杜羽元瞳の婚約者。東海水君の王子。
仲昊九宸の配下だった烈夷の息子。魔君に忠誠を誓った。山霊界に攻め入り支配した。

運命の桃花 第34話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

もくはやっと仕事を見つけたが、店主はもくの耳が聞こえないことを知ると追い出した。

「広い店内で遠くから呼ばれても聞こえず、客あしらいができるか。他の働き口を当たるんだな」

なかなか立ち去らないもくに店主が乱暴しようとした時、かんおばさんがもくと店主の間に入った。

「乱暴は許さないわよ」
関おばさんは店主を睨んだ。

店主はかんおばさんに捨て台詞を吐いて中に入っていった。

「おばさん、ありがとう」
「どこかで見た顔ね。この前輿にぶつかられたでしょ」

もくは気づいていなかったが、かんおばさんに言われて思い出した。

「二度も助けてもらいました。ありがとう」

「いいのよ。働き口を探してるの?よそ者を雇い入れる店は少ないからね。私は薬舗やくほで飯炊きをしてるの。先生に口を利くから私の手伝いをする?給金は少ないけど、飲み食いには不自由しない。どう?」

「もしかしてそん記薬舗ですか」
「そのとおりよ。知ってるなら話は早いわ」

「耳が聞こえなくてもいいですか」

「そうなの?もちろん大丈夫よ。働き者であれば先生は雇ってくれる」

かんおばさんはもくを薬舗に連れて行った。

もくを待たせ、かんおばさんはそん医師に話しに言った。

そん医師は木の実を「うまい」と言って食べ続けている。

「飽きもせずよく食べられますね」
かんおばさんはそん医師に声をかけた。

「やっと味覚が戻ったゆえ堪能させてもらう」

「10皿以上お食べですよ」
弟子はそん医師に苦言を言った。

「うるさい、お代わりだ。大盛りだぞ」
そん医師は弟子に命じた。

「お申しつけどおり下働きを見つけてきました」
かんおばさんは、そん医師にもくを紹介した。

もくではないか。なんと驚いたな」
そん医師は朗らかにもくを迎えた。

「顔見知りですか」
もくの友人を診たことがある。働きたいのか」

「今日からここで働いてもらいましょうよ。給金は弾んでください」
かんおばさんはそん医師に頼んだ。

かんさんは多忙ゆえ手伝いが必要だ」
そん医師は快くもくを雇い入れた。

もくそん医師とかんおばさんにお礼を言った。

「礼なんてよして。先生の味覚も戻ったことだし、ごちそうを並べて祝いましょ」
3人は奥に入っていった。

景休けいきゅうが日向ぼっこしていると、五椀ごわんが駆け寄って来た。

五椀ごわんは興味ありげに景休けいきゅうの側を回っている。

五椀に気づいた景休が杖を床に打ち付けると、五椀ごわんは逃げて行った。

「妖獣だな」
景休は呟いた。

薬舗ではもくが休まず懸命に働いている。

もくの働きぶりを見て、そん医師は声をかけた。

「ひと休みせよ」
「疲れてません」
「見ているこっちの目が回りそうだ。座ろうか」

2人は机に座った。

「友人の容体はどうだ」
「傷は目立たなくなりましたが、相変わらず見えません」

「医書で調べたところ毒に侵されているらしい。こうなるとお手上げだ」

「孫先生、先生は毒のせいで味覚を失ってたのに、どうして治ったのですか」

「私にも分からん。粛々と研鑽を積み鍼も試したゆえ、たまたま効いたのだろう」

「じゃあしゅうにいさんの目が治る見込みは?」
「鍼灸術による治療法を探ってみよう」

「ならばご面倒をおかけします」
もくそん医師に頭を下げた。

そん医師はもくがおすそ分けした桃のうち、食べきれない分を売っていて、お金をもくに渡した。

「いけません。桃は差し上げたのです」
もくはお金を受け取ろうとしない。

「いつまでも水くさい。遠慮するな」
「ではありがたく頂きます」

五椀ごわんは森の中で朱自在しゅじざいとその弟子・包鎖柱ほうさくちゅうに包囲されていた。

「いい加減聞き入れよ。霊獣であろう?人間界で無為に時を過ごせば天がお嘆きになるぞ。私は清風観せいふうかんの38代目でな。幼少より霊山で修行した。お前と切磋琢磨すれば、すぐさま神仙の仲間入りだ。その暁には我が眷属として迎えよう。流浪の獣よりましだ」

朱自在しゅじざいが説得するのを、五椀ごわんはきょとんとした顔で聞いている。

「師匠、まだ説得を?だたの犬にしか見えませんよ」
包鎖柱ほうさくちゅうは不満を言った。

「俗物め。お前の目は節穴か。これのどこが犬だ」
朱自在は弟子に言った。

「私の話は通じておらんのか」
朱自在は優しく五椀ごわんを見ている。

五椀ごわんは逃げることもなく、尻尾を振ってその場にいる。

「問題ない。分かるように話そう。ワンワワワワワン」
朱自在が犬の鳴きまねのようなことをすると、五椀ごわんは朱自在にお尻を向け、おならをした。

埃が舞いあがり、朱自在の顔にかかった。

「通じたな。…下山してすぐ霊獣に会うとは運がよい」
朱自在は喜んでいる。

包鎖柱ほうさくちゅうが五椀をつかまえようとすると、五椀ごわんは逃げ出し、通りかかったもくの足元に身を寄せた。

「気をつけよ、襲われてしまう」
朱自在は黙に言った。

「この子が襲う?」

もくは不審者を見るような眼で朱自在を見た。

もく五椀ごわんを抱き上げた。

「捕らえて食べるつもりね」
黙は言った。
「それは…」
朱自在は言いよどんでいる。

「修行者なら子犬に情けをかけなきゃ」
「子犬だと?違うぞ、そやつは…」

「もう大丈夫、一緒に帰ろう」
五椀はもくにおとなしく抱かれ一緒に帰った。

朱自在はもくを追いかけようとしたが、「師匠、肩が痛いです」という弟子の泣き声が聞こえ弟子を助けに戻った。

もく五椀ごわんと共に桃花小築とうかしょうちくに帰り、働き口が見つかったことを景休けいきゅうに話した。

「孫先生の薬舗で働くわ。それほど忙しくないし和気あいあいなの」
「孫とは?」

「往診してくれたお医者様で、とてもいい人よ」
「そうは思えん」

「あなたの傷を治して私を雇ってくれた。いい人だわ」
景休は何かの気配に気づき、顔を寄せた。

「さっき帰り道で子犬を拾ったのよ。一緒なら留守番も寂しくない」
もくは景休に五椀ごわんを抱かせた。

「帰り道で?奇遇だ」
「食事を作るわ」

もくは台所に向かった。

「逃がしてやったのになぜ戻った?」
景休は五椀に話しかけた。

五椀は逃げようとしているが、景休が押さえつけている。

「一体どこから来た?目的は?深手を負っていてもお前くらいたやすく殺せるぞ」

もくが景休を呼ぶ声が聞こえ、景休は力を弱めた。

五椀は景休から逃げ出した。

「夕餉を待ってる間に菓子でも食べてて」
もく景休けいきゅうの前に菓子を置き、景休の手に菓子を握らせた。

「苦労をかける」
景休は菓子を食べた。

夕食が出来上がり、食卓に料理が並んでいる。

しゅうにいさん、向かって左にあるのが汁物で、右がおかずよ。食べて」

もくはご飯をよそい、景休の手に持たせると、自分も食べ始めた。

食事中、もくは占い師(司命しめい)に言われた言葉を思い出しながら景休けいきゅうをじっと見つめている。

『一時の困難で失望せぬこと。そなたはある貴人と運命的に出会う。出会いは目前だ。心を静かに保ち耐えて待つがいい』

食事をしていないもくに景休が声をかけ、もくは我に返った。

五椀はもくの前にお行儀よく座った。

「とても頭のいい子犬ね」
もくは感心している。

「妖怪だ」
景休は言った。

「まだ名をつけてないわ。小白しょうはくなんてどう?」
もくは景休を見た。

「よき名だ」
小白しょうはく、お食べ」

もく小白しょうはくの前にごはんを置いた。

扶雲殿ふうんでんでは、司命しめいが天雷の動きを九宸きゅうしんに報告していた。

紫光しこうが薬王洞で九宸の薬の量を調査していたそうだ。

天雷真君てんらいしんくんが怪しんでいるようです。しばらくは人間界へ行かず、天宮にとどまるべきかと。五感の植わった庭に霊汐れいせきを導いたので、ご安心を」

司命は揖礼ゆうれいした。

「分かった」

2人が話していると、近くを逐日鳥ちくじつちょうが飛んでいった。

九宸は逐日鳥ちくじつちょうの後を追いかけた。

九宸は逐日鳥を見ながら、霊汐の言葉を思い出していた。

『さっき逐日鳥ちくじつちょうを見ました。全力でお天道様を追い、火の玉のようでした。きれいでしたよ』

仕事中だった十三じゅうさん花煙かえんは九宸の行動を不思議に思った。

休憩中、十三は階段に座りぼんやりと天井を見ている。

「ため息ばかりね」
花煙かえんは十三に話しかけた。

霊汐れいせきが恋しい」
「私もよ」
「霊汐は人間界にいたりして」
「人間界に?」

「そうよ。罪仙になると仙骨を抜かれ人間界で試練を受ける。霊汐も同じかと思ったの」

「通常であれば仙籍から除かれ人間界に落とされるけど、霊汐れいせき昆吾こんご剣で死んだのよ。輪廻に乗れず、魂はさすらう」
花煙が話すと、十三は沈んだ表情をした。

「神尊は冷酷すぎるわ。お気に入りの霊汐をあっさり殺すなんてね」
十三は呟いた。

「神尊だって苦しんだに決まってる。でも六界の守護神として自分を押し殺したのよ」

「全て元瞳げんどうが悪い。霊汐の秘密を暴き立てたうえ、あね弟子に罪を着せ父親を殺した。腹黒い女め」

「多くの命を奪った。なのに鎖妖塔さようとうで手柄を挙げ解き放たれるなんて。まさに“憎まれっ子世に憚る”だわ」

「霊汐を死地に送り自分は安穏な暮らしを?」

「そうでもない。楽伯らくはく医師を慕う者たちに恨まれてる。いずれ無残な末路をたどるわ」

「相応の報いを受けるべきよ」
十三は怖い顔をした。

元瞳げんどう杜羽とうと共にげん家の霊廟にいる。

「傷は回復を?」
杜羽とう元瞳げんどうに尋ねた。

「ええ」

元瞳げんどう、もはや天宮に居場所はない。無理してとどまるより私と東海へ戻ろう。そなたは私の許嫁だ。過去のことは何もかも過ぎ去ったではないか。まだやり直せる。行こう」

げん家は没落した。東海水君が婚姻を許すと思う?」

「もちろんだ。私はずっとそなたを愛している。父も知っている。それに私は家格など気にしない。知っておろう」

「私にかまわないで」

2人が話していると、十三じゅうさんの大声が響いた。

元瞳げんどう、姿を現せ」

2人は霊廟の外に向かった。

「急な来訪だが何の用かな」
杜羽とうは穏便に十三に尋ねた。

「憂さ晴らしに元瞳げんどうと手合わせしたい」
十三は元瞳げんどうを見た。

「猫も杓子も騒ぎ立てかまびすしいことだ」

「猫なんかじゃないわ。私は魚で霊汐れいせきは鳥だけど、あんたは鬼畜ね。恨みつらみを清算しましょ」

「ひどい言いざまだな」
杜羽とうは感想を漏らした。

「敵を討ちに?」
元瞳は十三に問うた。

「そのとおり」
「神尊はご存知か」

「あんたの名を聞けば耳が汚れる。ご気分を害されるわ。元瞳げんどう、御託はいいからかかってこい」

元瞳は沈黙している。

元征げんせいは魔道に落ちたけど、気骨のある男だった。元征げんせいの他はくずぞろいだから、どうりでげん家がすぐに落ちぶれるわけよ」
十三は元瞳を挑発した。

「兄の名を出すな」

「あら怒ったの?いくらでも言ってやるげん家は上古より続き、歴代の天帝に従った名家だわ。ところが今は魔に惑わされた元征げんせいは仲間を殺したけど、妹は兄より始末に悪い。臆病で陰険で性根が腐りきってる。先祖が泣いてるわね。始めましょ」

十三は構えた。

「話し合えば分かる」
杜羽とうは仲裁に入った。

「将軍は引っ込んでて」

十三と元瞳げんどうは素手で戦い始めた。

九宸は望月泉ぼうげつせんを見ながら霊汐のことを思い出していた。

霊汐はここで九宸のために作った丹薬の効力を試していた。

「大変です」
花煙かえんは九宸を呼びに来た。

九宸は紫雲台しうんだいに向かった。

十三は元瞳げんどうに傷を負わせ、位牌を祭る堂を壊した。
掟に背いた十三は普化ふか仙君に裁かれようとしていた。

「戦神、よもや減刑を求めに来られたのか」
普化ふか仙君は尋ねた。

九宸の代わりに司命しめいが発言した。

「仙君、襲撃を罪に問うのはいささか強引かと。常日頃から武芸に精進する十三ゆえ、この前は鎖妖塔さようとうで天雷真君と刃を交えました。こたび元瞳と武によって語り合わんと張り切り過ぎたようです。げん家の祠堂を壊したのも、恐らく物の弾みでしょう。祠堂は修繕するので、寛大な処分を願います」

司命は普化ふか揖礼ゆうれいした。
十三は嬉しそうに顔をほころばせた。

「十三は罪を認めた」
普化ふかが言うと、九宸たちの鋭い視線が十三に突き刺さった。

「私に構わず相応の罰を与えよ」
九宸は言った。

十三じゅうさん、同志を襲い深手を負わせた。処罰は免れない。鞭打ち10回」
普化ふかが言うと、十三は鼻で笑った。

「あんな鬼畜と同志になった覚えはない。こたびの罰は10回?ならばさらに10回を追加して。どうせまた戦うんだし、鞭打ちは一度で済ませたい」

「けんか腰にならないで」
花煙かえんは十三をなだめた。

「無理よ」
十三は言った。

「反省が見られない。20回を追加せよ」
普化ふかは決定した。

鞭打ちの刑を終え扶雲殿ふうんでんに帰って来た十三は、血だらけだ。

「痛いわ。死にそう」
十三の側には司命しめいがついている。

「あきれた。さっきの威勢は?要らぬ苦労を買うとは開いた口が塞がらん」

「やめてよ。説教したってもう遅いわ」
「今後は賢く立ち回れ」

「くどいわね。次からは相談してから突撃するわよ」

「次はない。謹慎を申し渡す」
部屋の外で話を聞いていた九宸は、割って入った。

「神尊、扶雲殿に籠もるより司命殿がいいです」
十三が言うと九宸は怖い顔をし、十三はしょんぼりした。

もくは上のほうの桃の実を採ろうと、景休にはしごを支えてもらい、上っていく。

もくは足を踏み外し、景休に抱き止められた。

「けがは?」
「大丈夫よ」

「桃の実は採り尽したはず」

「孫先生が薬舗に並べたら、高値で売れた。何個か残ってるなら鳥がついばむ前に採りたい。最近鳥がよく集まってくる」

「けがをすれば本末転倒だ」
「でも桃の実を採ったら、稼ぎになるわ」

もくが言うと、景休けいきゅうは沈黙した。

「やっぱり要らない。もらった指輪を売れば食べ物に困らない。ただ残念なのは、まだ一口も桃を食べてないことよ」

もくが不満顔で言うと、景休けいきゅうは少し笑った。

かんおばさんと買い出しに行ってくる」
もくは出かけて行った。

薬舗でもくが働いていると、そん医師が弟子に処方を渡し3服調合するよう命じた。

処方には“生地黄しょうじおう”と書かれている。

もくは薬草の匂いを嗅ぎ確かめ、間違っていることに気づいた。

もくかんおばさんに薬が間違っていることを話した。

「処方は生地黄なのに、調合したのは玄参げんじんです。似てますが薬効は異なります」
「確かなの?」

かんおばさんが確かめると、もくはうなずいた。

患者は間違った調合の薬を持って帰ろうとしている。

かんおばさんは、患者を呼び止めた。

「張さん、代わりに薬を煎じてあげる」
「面倒だろう」
「お安い御用よ、任せてちょうだい」

かんおばさんは患者から薬を受け取り、患者は帰っていった。

「随分とお節介だな」
そん医師はかんおばさんに話しかけた。

「薬が違います」
「薬が?なぜ分かった」
もくですよ」

そん医師が薬を広げて確認すると、確かに間違っていた。

「処方には生地黄と書いてあるぞ」
そん医師は処方した弟子に言った。

「間違いありません。ちゃんと棚から…。すみません、見た目がそっくりなので昨日引き出しに入れ間違えました」
弟子は間違いに気づいた。

「何度言えば分かるのだ。命を預かる医者は慎重を期さねばならぬのに…。かんさんのおかげで助かった。死人を出せば取り返しがつかぬぞ」

そん医師は語尾を荒げた。

「師匠、申し訳ありません」
弟子は頭を下げた。

「取り違えに気づいたのはもくですよ」
かんおばさんは言った。

もく、薬の知識が?」
そん医師はもくを見た。

「実家で父から教わりましたが、少ししか知りません」

「私からも学べばよい。今日から雑用はするな。薬の調合を任せよう」

「師匠、じゃあ私は?」
弟子は不安そうな法上で孫医師を見ている。

「そそっかしい性格が直るよう一心に医書を書写せよ」
「はい」

「孫先生にお礼を言って」
かんおばさんは嬉しそうにもくそん医師の前に押し出した。

「ありがとうございます」
もくは頭を下げた。

もくは働き者ですし、のみ込みも早い。きっと立派な医者になれます。器量もいいし思いを寄せる人はいないの?」
かんおばさんはもくの顔を覗き込んだ。

「腰を落ち着けて話し合う必要があるな」
そん医師はもくを食事の席に同席させた。

九宸は天尊を訪ねていた。

「今は火精かせいがそなたの命を保っておるが、いずれ燃え尽きよう。天君から全て聞いたぞ」
天尊は言った。

九宸は天孫の前に膝をつき揖礼ゆうれいした。

「師匠に逆らうことは万死に値します」
九宸は叩頭した。

「確かに罪深い弟子だ。天君は忠恕ちゅうじょの道を修む。公平な世を築き、民を富ましめ過ちを正し相手を思いやる。天尊山を本拠とする我らは六界の守り手だ。弟子入りした日より、そなたもその任を担っておる。死ぬまで追い求める道だ。だがそなたは門派の掟を破り天君の敷く道からも外れてしまった。正直に答えよ。霊汐を守ることで、世の公平と民の益は保たれるのか。10万年修行しても、そなたは今なお感情を持て余しておる。このところ私は天地と通じわずかな異変すら取りこぼさない。万物は生滅を繰り返す。近いうちにごうが下るだろう。そなたは一番弟子にして期待の星であり、ゆくゆくは私の跡を継ぐ身だ。今後長きにわたって私に代わり衆生を守ってゆく。ゆえに死ぬな。誰かのため犠牲になることも許さん。そなたは一度死んだ。再び死なせてなるものか。…霊汐が3度のごうを終えればよしとする。万一しくじるようなら見過ごせぬぞ。そなたの命は風前の灯火だ。女媧石じょかせきが戻るなら、私は神農鼎しんのうていを元の場所に返そう。その時霊汐の神魂が離散しても私を恨んでくれるな」

「必ずや霊汐にごうを乗り越えさせます」

「そう願おう。世に言う運命とは、果たして何であろうか。無駄なあがきと知りつつも全身全霊を傾け立ち向かうことか。そなたはすでに死力を尽くした。静観するがよい」

天尊山から出た九宸を元瞳が待っていた。

元瞳げんどうは九宸に近寄ったが、九宸は元瞳げんどうを無視した。

九宸は仙洗池せんせんちに向かった。

元瞳は後をつけて来て、九宸に話しかけた。

「神尊、おわびを。罰は受けました。お許しください」
「反省したか」

「全て私の過ちだと認めます。兄からのふみを隠したことも神尊を巻き込んだことも、真相を葬ろうと戦報を燃やしたのも過ちです。神尊、信じてください。将軍に返り咲くこともげん家の再興も望みません。ただ昔のように朝な夕な神尊に付き従いたいのです。神尊の心に住まおうなどとは願いません。日陰の存在でも結構です。どうか私をそばに置き、許してくださいませんか」

九宸は立ち去ろうとした。

「お待ちを。神尊に従ったげん家の兵がどれほど死んだと?私も幼くして配下となりました。私に対して少しくらい情があるはずです」

九宸は腕をつかむ元瞳げんどうを振り払った。

「期待させておいて、突き放すんですか。ここで私を待っていたのでは?」
元瞳は泣いて叫んだ。

「通りかかっただけだ。お前は霊汐を仙洗池せんせんちに突き落とした。私が怒りを抑えねば、今頃お前は池の底だ」

九宸は立ち去った。

残された元瞳げんどうは、1人泣いた。

仲昊ちゅうこう幽都ゆうと山の魔君まくんに会いに行った。

「何なりとお申しつけください」
「あの女子おなごの行方は?」

「分かりません。人間界にいるのは確かゆえ捜しています」

「本当に捜しておるのか。天息宮てんそくきゅうでの日々に満足し、すっかり使命を忘れたのでは?」

「ご下命を忘れるなどありえません」

「胸に刻んでおけ。赤い月の夜縛霊淵ばくれいえん幽冥ゆうめい門を開け放て。さすれば私自ら魔族の大軍を迎え入れよう」

「仰せに従います」
仲昊ちゅうこうは叩頭した。

「あれから5万年だ。これ以上は待てない」
魔君まくんは言った…。

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感想

黙が良い職場を見つけてられてよかったです。
そん医師が優しいからか、かんおばさん始め、はたらいてる人たちも優しい。

朱自在とその弟子・包鎖柱という謎の2人組が出てきました。
名前が赤い字で書いてあったので、重要な人物のようです。

五椀ごわんが犬ではないと見抜いた(視聴者全員見抜いてますが)朱自在はもしかしたらすごい人?
でもへっぽこ感が漂ってました。

黙は五椀ごわん小白しょうはくと名付けました。
もともと五椀ごわん霊汐れいせき小白しょうはくに似てるからと飼い始めたもの。
なんだか泣けます。

黙は少海から教わった薬学の知識を動員し、見事に薬草が違うことに気づき、医者見習いに昇格しました。
黙はまじめで勤勉ないい子なので、幸せになってほしいです。
でも19歳で亡くなることになってるんですね( ;∀;)

もく司命しめい(占い師ver)が言っていた貴人=景休だと思っている様子。
確かに景休は金の指輪を持ってたし、育ちがいいから高貴なふるまいなのかもしれません。
もくの勘違いに納得。

「最近鳥が多い」と黙が言っていたのが気になります。
景休が使ってる鳥でしょうか?

天尊のお話を伺って、修行が進むと感情がなくなると私は理解しました。
なるほどね!帝君が石から生まれた感情のない人物と言われていた理由が分かりました。
帝君は相当修行が進んでるから、最初あんな感じなんですね。
(帝君とは永遠の桃花と夢幻の桃花に出てくる方です。)

それにしても杜羽の元瞳好きには頭が下がります。すごい。

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