運命の桃花~宸汐縁~第38話 もつれた赤い糸

第38話 もつれた赤い糸運命の桃花

運命の桃花 第38話 あらすじ

景休けいきゅう九宸きゅうしんは互いに相手が誰なのか気づいた。2人は黙を巡って対立し、ことあるごとに張り合った。青瑶せいよう幽都ゆうと山に左遷された元瞳げんどうに、効能の弱い醒神丹せいしんたんを渡した。暴走気味な承晏しょうあんを止めるため、青瑶は霊汐れいせきが生きていることを承晏に話した。薬王は玉梨ぎょくりが思いを寄せる相手を雲風うんほうと勘違いし、2人の婚姻許可を天君からもらった。

 

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運命の桃花 第38話 登場人物

人間界に転生した霊汐。生家を出て、桃花小築で景休・九宸と暮らし始めた。
九宸天族の戦神。神尊。黙に宋子玉だと勘違いされているが、訂正していない。
景休山霊界の国師だった。黙と人間界で暮らしている。
青瑶霊汐の姉弟子。
雲風九宸の弟弟子の上神。
玉梨薬王の娘。
関おばさん黙に仕事や見合いを紹介してくれた親切な(お節介な?)女性。
孫医師黙の働く孫記薬舗の医師。

運命の桃花 第38話 詳しいあらすじ【ネタバレ有】

九宸きゅうしん景休けいきゅうは人間界の森の中、仙力全開で戦い始めた。

朱自在しゅじざいとその弟子包鎖柱ほうさくちゅうは木陰から2人の戦いを見ている。

「なんということだ。神仙がおられる」

朱自在しゅじざいが興奮してもっと近くで見ようとするのを弟子は止めた。

「もし妖怪だったら?」
「何でもよい」

朱自在しゅじざいは「神仙」と大声で呼びかけて近寄ろうとしたが、風圧で飛ばされた。

九宸は人間が見ているのに気づき、場所を変えた。

吹き飛ばされた朱自在しゅじざいは起き上がり、神仙の姿を捜したが、すでに神仙は消えていた。

青瑶せいようが自分の薬房で仕事していると、玉梨ぎょくりの声が聞こえてきた。

雲風うんほう上神、神尊はどこです」
「くどいぞ。私は知らん。追ってくるな」
「追ってません。ここは私の住まいよ」

玉梨ぎょくりは「フンッ」と言って薬王洞に入っていった。

雲風うんほうは青瑶に会いに行った。
雲風が青瑶せいようの薬房に入ると、すぐに「動かないで」という青瑶せいようの声が飛んできた。

青瑶せいようの薬房の床には蟻がたくさんいた。

蟻は雲風の衣を上ってきている。
気付いた雲風はゆっくり動こうとした。

「動かないで」
青瑶せいようは言った。

「この虫は何だ」

「かつて毒后も愛した猛毒を持つ天毒蟻てんどくぎ。もしかまれたら人間はおろか神仙も2刻のうちに肉が干からびあっさりと死ねます」

青瑶せいようは説明を終えると、天毒蟻てんどくぎを壺の中に戻した。

「不気味な虫を飼ってどうする」
「怖いので?」

「この私が虫を怖がると?毒后が復活し目の前に現れても動じない」

「そうですか」
「当然だ」
「勇敢だこと」

雲風は青瑶に話しかけようとして、動きを凍り付かせた。
雲風の顔を壺に戻らなかった天毒蟻てんどくぎが歩き回っていたのだ。

声にならない声を上げて、雲風は青瑶に助けを求めた。

「平気では?」
青瑶は言った。

「かまれる。青瑶助けてくれ」

「そのままで。じっとして」
青瑶せいようは壺の中に天毒蟻てんどくぎを戻した。

「雲風上神ともあろう方が虫におびえるとは。外に漏れたら笑い者です」

「怖くはない。不快なだけだ。それを何に使う?」

天毒蟻てんどくぎは丹薬にできます。体液には幻覚を除く作用があるのです。これで作った醒神丹せいしんたんは妖魔から身を守るゆえ、魔族との戦いに必須ですが、ご存じないので?」

「知るはずもない」

「私にご用でも?」

「用もなく来るなと?元瞳げんどうの左遷を伝えに来た。昨日幽都ゆうと山へと発ったぞ」

「知ってます」
「なぜ知っている」

幽都ゆうと山は魔気が濃いので行けばたやすく侵され、錯乱し魔道に落ちるやも。だから元瞳の配下に私が薬を渡したのです」

「元瞳のために醒神丹せいしんたんを…」

「ええ、そのとおりです。天毒蟻てんどくぎは荒野の虫。暗い所の生き物は火の光で弱ります。ゆえに日にさらして効能を弱めました」

「丹薬が効能を失えば元瞳げんどうは魔道に落ちるぞ」

「そうなれば、あなたが成敗を。天宮軍の上神は魔を退治するのが本分では?桃林とうりんに帰ります」

青瑶せいようは部屋を出て行き、雲風は考え込んだ。

桃林とうりんには、禁足を命じられている承晏しょうあんを見張るため、天兵が派遣されていた。
青瑶せいようは天兵に挨拶をして桃林とうりんに入っていった。

花蓼かりくは家の近くの桃の木にもたれ、酔っぱらっている。

花蓼かりくの周りには何本もの酒瓶が転がっていた。

「その心、誰が知るや」

酔った花蓼かりくは大声でつぶやいている。

青瑶が帰ってきたのに気づき、花蓼かりくは青瑶に挨拶した。

「おかえりなさい」
「飲みすぎよ」

「狐に付き合って飲んであげたの。酔えば けんかしに行けなくなるでしょ。勝てないくせにけんかばっかり。おなかがすいてるなら、きのこを煮てあげる」

「要らないわ。お酒はそれまでに」

青瑶せいようは家の中に入っていった。

「“その心、誰が知るや”狐はいつもそう言ってる。きっと師匠の楽伯らくはく医仙と霊汐れいせきさんが恋しいのね」

花蓼かりくは呟き、酒を飲んだ。

青瑶せいようが家に入ると、承晏しょうあんが剣の手入れをしていた。

「傷は治ったの?橋へ行っては見張りの兵を挑発してるそうね。禁足のめいがなければどんな悪事を犯してたか。聞いてるの?」

青瑶せいよう承晏しょうあんに言った。

「いきなり説教か。さすがは天宮の上仙じょうせんだ。師匠の最期を忘れたか?霊汐の無残な死は?」

承晏しょうあんが問いかけると、青瑶は眉根を寄せ苦しそうな表情を見せた。

「師匠は元瞳げんどうに殺され、霊汐は九宸が手にかけた。その恨みを忘れて天宮に住まい、師匠直伝の医術で薬を作るとはな。敵に尽くして恥ずかしくないのか。青瑶、師匠は親がいない俺たちを育ててくれた。医術も授けてくれた。その師匠と霊汐の死が心に響かないのか?」

「話はそれだけ?“敵討ち”なんて言うのはたやすいけど、果たさないと無意味よ。あなたはしくじった」

「敵に尾を振るよりましだ」

「元瞳は上仙で、天宮軍の将軍だった。長年妖獣と戦ってきた者を簡単は倒せない。あなたの仙力じゃ元瞳げんどうが手負いでも勝てないわ。やみくもに剣を向けても一時のうっぷん晴らしで終わる。師匠が殺され、私の嘆きと悲しみはあなたに劣らない。でも今はまだ敵討ちの時機ではないわ。あなたは決してもめ事を起こさないで。この件を早く世間に忘れさせたいの。桃林とうりんから目をそらせたい」

「なぜだ」
「霊汐が生きてるからよ」

「まさか…。姉さん何と言った?姉さん、今何と?霊汐が生きている?それは本当なのか?」
承晏は青瑶の肩をつかんだ。

「だます必要が?」
「霊汐が生きているだなんて。でも確かに霊汐は…」

「神尊が危険を冒して救ってくださった。今は霊汐の魔気を除いてる最中よ。この件は天族にも魔族にも知られてはならない。もし知られたら、霊汐の命が尽きるだけじゃないわ。神尊も制裁を受ける。今まであなたに隠してたけど、事の重大さがこれで分かったわね?承晏しょうあん、いいわね?霊汐が無事に戻ってくることだけ考えて。師匠に恩返しをしたいなら、己の本分を守り決して騒がず霊汐の帰りを待つの。それ以外のことは後回しで構わない」

「分かった」
承晏は言った。

人間界ではもくが一生懸命働いている。

もく、帰っていいわよ」
かんおばさんがもくに声をかけるが、もくは帰ろうとせず働き続けていた。

「薬舗の宿直は必要ですか?」
もくは帰りたくないのか、そん医師に尋ねた。

「いや、要らないよ。悩み事は焦ったところでどうにもならん。そうだろう?帰りなさい」

そん医師が言うと、もくは納得して帰り支度をした。

もくが薬舗から出ると、景休けいきゅうが迎えに来ていた。

しゅうにいさん、今日はそうさんと仲よくしてたの?」

もくは言いにくそうに景休に尋ねた。

「無論だ」
「それならよかった」

2人は歩き出した。

「何を案じているのだ?」
景休は歩きながらもくに尋ねた。

「その…。宋さんは武芸がお得意なの」
「私が負かされると?」

「そうじゃないわ。宋さんは書生だもの」

「書生?もくよ、ありがとう。私を案じてくれた。しかし私なら大丈夫だ」

「私は…」

「そなたは人間の非情さを嫌というほど見てきた。誰かに好意を寄せられると戸惑うのは当然のこと。だがそなたは賢い。誰の優しさが本物か分かるだろう。私は急ぐつもりはない。ただそなたに心を開いてほしいのだ。自分のことを卑下してはいけない」

もくは景休の話を、俯きながら聞いていた。

「あめ細工はいかが」
屋台から声が聞こえてきて、景休はもくにあめ細工を買ってやろうと屋台に向かって行った。

もくを迎えに行くため、九宸が小白しょうはくを連れて森を歩いていると、とうのつるが九宸を追って来た。
九宸はつるに仙術を放ち退けた。

道はつるが蔓延り塞がれていた。
九宸は仙術を使い道を開いた。

つるに捕らわれた小白しょうはくを、九宸は助けた。

もくと景休が前方から歩いてきた。

もくは景休に買ってもらったあめ細工を手に持っている。

「天気がよく、ご機嫌のようだな」
景休は九宸に声をかけた。

「迎えに行くつもりが邪魔が入った。すまない」

九宸は景休を無視し、もくに言った。

「いいえ」
「それは?」
九宸はあめ細工に目をやった。

「あめ細工よ」
「うまいか?味見をさせてくれ」

九宸はもくからあめ細工を受け取った。

「雑なつくりだな。しかも醜い」
九宸はあめ細工を景休の方に向け、見ながら言った。

「味はどうだ?」
急にあめ細工が割れ、地面に落ちた。

小白しょうはくは地面に落ちたあめ細工を食べている。

「惜しいな。明日私が買う」
九宸はもくに言った。

もくは戸惑っている。

景休はもくを連れて家路を急いだ。

小白しょうはくは褒めてほしそうに、尻尾を振って九宸を見上げていた。

「でかした」
九宸は小白しょうはくを褒めた。

桃花小築とうかしょうちくに3人と1匹が帰ると、屋根に穴が開き、家具が原型を留めず木片になっていた。

「これはどういうこと?」
もくは屋根に大きな穴が開いているのを見て、2人に問いただした。

もちろん2人が戦っていて壊してものだ。

「家が古いせいだろう。明日修理しておく」
景休は言った。

「壊れるはずないわ。この家は木組みがしっかりしてる」
「私もできる。修理できる」
九宸は名乗り出た。

「お二人にお願いするわ」
もくは頭を下げた。

気まずいもくは、小白しょうはくを連れて散歩に出かけた。

「正体を明かせ」
黙が出かけると、景休は九宸に言った。

「そちらが先に名乗れ」
九宸は景休を見た。

「天族だな?」
山霊さんれい族か?」

もくが誰か知っていると?」
「小鳥のくせに腕が立つ。相応の身分であろう」

「私はもくと偶然会ったが、お前は違う。目的があって来たな?」

「混乱に陥る山霊さんれい界に目もくれず、人間界で色恋にふけるとは、家族も親族もおらぬようだな」

もくを早くから知っているのであれば、天宮の者であろう」

とうのつるを使う仙術は見覚えがある」

「桃林にここまで仙力の強い男はいなかった」

「私と互角に戦えるのは上神に近い。山霊さんれい族で思い当るのは、あの者だけ」

「命の瀬戸際の仙女を救えるのはあの者だけ」

景休けいきゅう国師」
「九宸戦神」
2人は相手の正体に気づいた。

もくが浜で小白しょうはくと遊んでいると、九宸が迎えに来た。

「この獣はますます愚鈍になった」
九宸はもくのそばに近づいた。

「宋さん、いつ来たの?」
「少し前に。己を犬と思っている」

九宸は浜に穴を掘ろうとしている小白しょうはくを見て言った。

「だって小白しょうはくは犬ですもの」

「犬ではない。白澤はくたくだ。神獣で吉兆のしるしだ。まだ幼いが、成長すれば言葉を話し、万物の情を解するだろう」
九宸は話した。

「宋さん、講談本の読みすぎよ。ちょうどよかった。話があるの」
「聞こう」

「今の私は毎日を楽しく暮らしてる。家にいた時よりもね。耳も治ったし、話せるようになった。働き口も見つかった。孫先生に医術を学んで人を助け、衣食をまかなってる。この年になって初めて充実した日々を送ってるの。今の暮らしがとても好きよ。だから、あなたと一緒に帰らない」

「帰らなくていい」
「無理強いしないのね?」
「するわけがない」

「宋さんなら分かってくれると思った。あなたは家柄がよく、名声もあり学識が豊かで輝かしい前途も待ってる。こんな所にいる人じゃない。宋さん、明日にも帰ったほうがいい」

「誰が帰ると?」
「違うの?」

「そなたと一緒にとどまる」
「私と?どうしてなの」

「隠し事はできない。そなたの居場所がばれるやもしれん。そなたの身が危ない。ゆえに私が守る」

「誰かが私を狙ってるとでも?」

「私がとどまる理由はいずれ分かるだろう。そなたを独りにできない」

「私は独りじゃないわ」
「余計に心配だ」

「宋さん、誤解しないで。しゅうにいさんは…」

「あの者は“にいさん”で、私は“宋さん”か?なぜだ」

九宸はもくに近づいた。

「雷が鳴ってる」
もくは戸惑い、空を指さした。

「帰りましょう」

もく小白しょうはくを抱いて家に帰った。

家に着くころには、雨が降っていた。

景休は庭で、空を見ていた。

「雨が降ってるのよ。衣が濡れてしまう」

もくは景休に声をかけた。

「雨だって?見よ、美しい虹だ」

景休が空を指さすと、空に虹がかかった。

「急に晴れ間が」
もくは空を見上げた。

「海の景色はどうだった?」
景休は九宸に声をかけた。

「見事だ」
「夕日は格別だぞ」
景休は九宸をみた。

もくは気まずそうに小白しょうはくを撫でている。

「着替えたほうがいい」

景休がもくに声をかけると、もくは「小白しょうはく、お茶を入れましょう」と言って家に入っていった。

景休はもくの右耳の後から、魔印が消えているのに気づいた。

「結界を破るとはなかなかの仙力だ」
九宸は景休に言った。

「健脚のようだな。大雨の前に戻った。もくが無事なのは天族が救ったからか?またはお前の独断の行いか?」

「どう思う?」
「私は知らぬが、とにかく救ってくれて感謝する。過去はどうであれ、これからは私が面倒を見る」

「お前が?」
「そうだ」

「私と争う気か?」

「なるほど。お前は戦神ゆえに争いを好む」

「戦うしかない」
「決まりだ」

景休は家に入っていった。

幽都ゆうと山の元瞳げんどうの所に、杜羽とう醒神丹せいしんたんを届けた。

青瑶せいようは承晏に霊汐のことを話したことを、雲風に報告していた。

承晏しょうあんは敵討ちのため何をしでかすか分からない。話せば落ち着くかと」
青瑶は言った。

「まあいいさ。隠し通すのは難しい」
「神尊は従極淵しょうきょくえんに?」
雲風は首を横に振った。

「下の世界に?」
「恐らくそうだろうな」

玉梨ぎょくりは顔を輝かせ、部屋に入って来た。

「聞こえましたよ。神尊はどこです?“下の世界”って山霊さんれい界か青丘せいきゅうですか?人間界とか?」

玉梨ぎょくり、薬王の娘のくせに盗み聞きとは下品だ」
雲風は忠告した。

「誰が盗み聞きを?」
「そなただ」

「ご自分も上神のくせに青瑶せいようを追い回してる。未婚の男女が見苦しい」

「何だと?」
「何よ」
「玉梨さん、やめて」

青瑶せいようは部屋から出ていった。

「だが一理あるぞ。青瑶、どこへ?」

雲風が青瑶せいようの後を追おうとすると、玉梨が立ちはだかった。

「それで神尊は?」
「教えてやるものか」
「教えてったら」
雲風と玉梨ぎょくり青瑶せいようの部屋でもみ合っている。

青瑶は部屋の外で薬王に出会い、あいさつした。

醒神丹せいしんたんは、よい出来だ。ご苦労だった」
薬王は青瑶に声をかけた。

「私につきまとうな」
雲風は青瑶の部屋の入口で、玉梨に言った。

「薬王洞に入り浸って恥知らずね」
玉梨も応戦している。

薬王は玉梨ぎょくりと雲風のやり取りを見ている。

「誰が恥知らずだ」
「とにかく言うまで帰さない」
玉梨ぎょくりは雲風の腕をつかんでだ。

玉梨ぎょくりお願いだよ。聞かないでくれ。今日は美しいな」
雲風が玉梨の手を振り払って逃げようとすると、薬王に出会った。

雲風は足を止め、薬王に挨拶した。

「雲風上神、薬王洞にいかなるご用で?」
「通りかかっただけだ。失礼する」
雲風は去っていった。

「待ちなさい」
玉梨ぎょくりが雲風の後を追おうとすると、薬王が玉梨を呼んだ。

「二度と扶雲殿ふうんでんに行ってはならん。人間の女子おなごのようにはしたない真似はするな」
薬王は玉梨ぎょくりを諫めた。

「なぜ扶雲殿がだめだと?」

玉梨ぎょくりや、嫁ぎたいのなら、ふさわしい相手を父が選ぶ。勝手は許さない」

「私の婚姻です。言いなりになれと?」
「嫌ならせめてましな男を選びなさい」

「ひどい。父上の偏見です。言っておきますが、私はあの方・・・に嫁ぎます。相手は自分で選びます」
玉梨は真っ直ぐに薬王を見た。

女子おなごの身でありながら愚かなことを」
「もう決めました。私はもう何万年もあの方が好きなんです」

玉梨ぎょくりは宣言すると、薬王が止めるのも聞かず部屋に入って閉じこもった。

「なんということだ」
薬王は呟いた。

人間界では、どちらが屋根の修理をするかもくが問いかけていた。

「私は病み上がりゆえ貴殿に頼みたい」
景休が九宸に言うと、九宸は目を見開いた。

「治せるの?」
もくは不安そうに九宸を見た。

九宸はもくに微笑み、梯子に上っていった。

景休は術で梯子を壊し、九宸は梯子から落ちた。
しかし九宸は仙術を使い体を守ったのでどこもけがをしていない。

「私は役に立たん。しゅう殿がやってくれ」
九宸は苦しそうに顔を歪め、景休に頼んだ。

「私が?私には無理だ。いまだに目がかすむ。やはり貴殿にお願いする。見えたり見えなかったり不安定なのだ」

もくは役に立たない男たちに頼るのをやめ、自分で梯子に上っていった。

2人はもくの行動に気づき、梯子に駆け寄った。

「ひ弱な若様たちには無理ね」
黙は言った。

景休と九宸はどちらが梯子に上るかで戦い始めたが、かんおばさんがもくを訪ねてやってきたため休戦した。

「おばさん、私はここよ」
もくは屋根の上から声をかけた。

「この2人に何かされたの?」
かんおばさんはもくを心配している。

「屋根の修理よ」

「これは男の仕事よ」
かんおばさんは言った。

「いいの。できるわ」

「大の男が見物してるとは情けない。早く手伝いなさいよ」
かんおばさんは男たちを押しやった。

もくが滑って落ちそうになったのを、2人は仙術で助けた。

もくが屋根から下りてくると、かんおばさんは男たちを追い払い、もくと2人で話し始めた。

「あのしゅうというのはどういう男?」
「どういうって?」

「どこから来た何者よ?土地や財産は持ってるのかを…」
「おばさん、声が大きい。何も知らないわ」
もくは小声で答えた。

「本当に無邪気な子ね。日々の暮らしは銭が必要なのよ。このまま養うつもり?」

かんおばさんの声は、男たちに届いている。

「本当に知らないの。偶然知り合って、目が悪いからお世話をし、助け合うように」
もくは話した。

「それから?」
「おばさん、もう聞かないで。お水を」
「水などいいから話の続きを。しゅうだけじゃない。あの宋というのは何者よ」
「前に話したわ。父の友人の子で許嫁だった」
「それで?」
「果物を洗ってくる」

「要らないってば。それより今後どうするつもり?」
「おばさん、私は1人でやってゆけます」

「1人きりで暮らすって?なぜ余計な苦労をするの。また今度来るわ」

かんおばさんは腹を立てて帰っていった。

「役にも立たない飾り物ね」
かんおばさんは男たちに捨て台詞を言うのを忘れなかった。

九宸と景休はかんおばさんに舌打ちをした。

もくは夕餉の用意をしながら考え込んでいる。

「どうした。何を考えている」
景休は台所にやって来た。

「いいえ。何でもない。おなかがすいたの?もうすぐできる」

「いつも私に“空腹か”と聞くが、私は穀潰しなのか?」

景休が言うと、もくは笑った。

景休は黙に金の指輪を差し出した。

「隠していたな?昨日屋根が落ちた時、割れた花瓶から出てきた。売れと言ったのに、なぜ売らなかった」

もくは俯いている。

「あなたの大切な物よ。売ったりできない」

もくよ。私は官吏だった。裕福で屋敷も土地もあれば大勢の使用人もいる。もしも…」

景休が言葉をつづけようとすると、景休の服に火が燃え移った。
もくは慌てて火を消そうとした。

九宸が景休の服に水をかけると、火は消えた。

「礼はいい」
九宸は景休に言った。

「着替えてくる」

景休は九宸とすれ違いざま、「“お返し”だな?礼を言う」と九宸に言った。

薬王は天君に会いに来ていた。

「父でありながら粗忽で恥じ入るばかりです。今まで娘の婚姻に考えが及びませんでした」

「薬王よ。そなたは長年重責を担ってきた。その働きは知っておる。天宮で久しぶりの慶事だ。盛大に祝わねば。婚礼の日が決まれば私が取り仕切ろう」
天君は朗らかに話している。

「薬王に祝いを申し上げます」
天君の側近・百扇ひゃくせんは薬王に揖礼ゆうれいした。

「娘に代わり、ご承諾に感謝を」

薬王は叩頭した。

天君が許可したのは、玉梨と雲風の婚姻だった…。

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感想

「大丈夫?これ」
私が今回、観ながら何度もつぶやいたセリフです。
神尊と景休さんのイメージ大丈夫?という意味です。特に神尊。
前話にも増してエスカレートしてません?ラブコメ要素。

私はてっきり神尊は景休が黙と同居しているのに気づいて人間界に居座ってると思っていたのですが、一応黙を守るという任務がある様子??

心配していた通り、薬王、誤解してました!
私としては、前話の最後の所だけ聞いていると薬王は誤解してもおかしくないと思っていました。
でも、今回のを聞けば玉梨ぎょくりは雲風を好きではないと誤解が解けると安心していました。

でも今回の薬王のセリフは
「嫌ならせめてましな男を選びなさい」です。
ここで、嫌な予感がしました。

玉梨ぎょくりの好きな相手が神尊だとちゃんと理解してるなら、このセリフ出ませんよね?
これは相手が雲風だと思っているからこそのセリフだと思います。(雲風上神には申し訳ないですが)
雲風=マシではない男
という式が天宮では成り立ってるように今まで見てきて察しました(失礼)。

なので薬王は「嫌ならせめてましな男を選びなさい」と言ったのだと思います。
神尊は尊敬されてますから、玉梨の好きな相手が神尊だと正しく薬王が理解してるなら、こんなこと言わなかったと思うのです。

玉梨が「あの方・・・に嫁ぎます」と言ったのも気になってました。
ちゃんと名前を言わなかった。
そしたら、案の定(; ・`д・´)

屋根の修理は、もくが出かけている間に2人が仙術でチャチャチャッと終わらせておくものだと思っていたのですが、全くそんなことはなく…。
黙が自力で行ってました( *´艸`)いいね。

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