夢幻の桃花 三生三世枕上書 第38話 月令花の悲しみ

第38話 月令花の悲しみ夢幻の桃花

夢幻の桃花 第38話 あらすじ

東華とうかの衣装を身にまとった陌葉はくようが待っていると、嫦棣じょうていがやってきて、計算通り穴に落ちた。陌葉はくよう嫦棣じょうていを部屋に連れていき、阿蘭若の服に着替えさせた。青殿下は嫦棣の後を追いかけまわした。鳳九は陌葉だと勘違いしたまま、東華と月令花を見に行った。鳳九は嫦棣を苦しめたことで投獄された。牢は火に包まれ鳳九は沈曄に助け出された。

【伊藤久右衛門】


夢幻の桃花 第38話 登場人物

鳳九青丘の姫。記憶を失い、阿蘭若の夢の中で阿蘭若になっている。
東華最も尊い神仙。鳳九を救うため、阿蘭若の夢の中で息澤になった。
陌葉鳳九と東華を救うため、連宋が差し向けた阿蘭若の師匠。西海の第二王子。
阿蘭若比翼鳥族の第二公主。蛇に育てられ、非業の死を遂げた人物と言われている。
嫦棣阿蘭若の妹。
橘諾阿蘭若の姉。
傾画阿蘭若の母。
青殿下阿蘭若と一緒に育った大蛇。
沈曄阿蘭若の従兄弟。阿蘭若の夢を作った人物。

夢幻の桃花 第38話 あらすじ【ネタバレ有】

陌葉はくよう東華とうかの衣装を身にまとい待っていると、嫦棣じょうていがやってきた。
鳳九ほうきゅうは木陰に隠れて様子を見ている。
さらにその様子を東華とうかが見ている。

息澤そくたく様の置き文を拝見しました」
嫦棣じょうていは声をかけるが、陌葉は振り返らず、声も出さない。
「実は私も…」
嫦棣じょうていは偽の息澤そくたくに近づこうとして、穴に落ちた。

陌葉はくようは顔を隠しながら嫦棣じょうていを穴から助け出した。
嫦棣じょうていも濡れて泥の付いた姿を見られたくないのか顔を隠しているため、息澤そくたくが偽物であることに気づいていない。

「着替えた方が良い」
陌葉はくようは声を変え、嫦棣じょうていを用意していた着替え部屋に連れていった。

「キャー」
着替え部屋の中から嫦棣じょうていの叫び声が響き、阿蘭若あらんじゃくの服に着替えた嫦棣じょうていが部屋から駆け出して行った。
嫦棣じょうていの後をせい殿下が追いかけていった。

「計画どおりうまくいってるかな」
鳳九が陌葉はくようの帰りを待っていると、木の向こうに東華とうかがいて「ここで何を?」と声をかけた。

「一緒に月令花げつれいかを見に行く約束でしょ」
木の枝で顔が見えないため、鳳九は東華とうかを、息澤そくたくのコスプレをした陌葉はくようだと思っている。
鳳九は東華に用意しておいた仮面を渡した。

「“玉女誕ぎょくじょたん”という習わしでね。婚姻前の若き男女は仮面を着け歌か舞で愛を伝え良縁を結ぶ。面白いでしょ」
鳳九は話し、2人は仮面を着けた。

「忘れないで。知らない女子おなごに声をかけられても強い意志を持って拒むのよ。もし私をさらおうとする男がいたら殴り倒していい。お互い助け合いましょ。私を守る状況のほうが多いだろうけどね」
「よかろう」
「声まで息澤そくたくみたい…まあいいわ、早く」

鳳九は東華の手を引いて先を急いだ。

大王一家が集まり食事をしようとしているが、阿蘭若と嫦棣じょうていの姿がない。
「おてんばな阿蘭若はさておき、嫦棣じょうていまで…」
橘諾きつだくが不審に思っていると、叫び声をあげながら嫦棣じょうていが広間に入ってきた。

後ろからせい殿下が追いかけている。

大王に抱き留められた嫦棣じょうていは意識を失った。
「(青殿下を)始末しろ」
大王が兵士に命じた。
沈曄しんようは青殿下を眠らせ、部屋に連れていくよう兵士に言った。

鳳九と東華は断腸だんちょう山の奥に到着した。
人影はなく2人だけだ。
鳳九と東華は寝転がり、空を見上げた。

月令花げつれいかいぬの下刻に花が咲くそうよ。もう少し待たないとね。…じゃあ月令花げつれいかの歌を聞かせてあげる」
鳳九は歌を口ずさんだ

月令花げつれいかは天上の雪のよう 咲いたとたんしおれ始める 生まれては散る うたかたの命 月が出ても花を見られず 花が咲いても月を見られず 月令花げつれいかは知らず 月にも出会えず 花は咲いてわずかに生き しおれて散ってしまう 花の一生はかくもはかない”

東華とうかは鳳九の歌を誉めた。
「花にすごく興味があるわけじゃないの。ただ以前書で読んだ。月令花げつれいか玉女誕ぎょくじょたんの時しか咲かずたとえ咲いても月を見られないって。つまり毎年この時分は月が出ない。でも月令花げつれいかが一番見たいのは月の光だそうよ。かわいそうだわ。愛はあるのに縁がない」
鳳九は語り、陌葉はくようがいつもと違うと不思議がった。

「どこがだ」
東華は鳳九に尋ねた。
「うまく言えないけど、見ず知らずのようで懐かしさもある感じよ。…陌葉はくよう、好きな女子おなごはいるの?」
東華は答えない。

「言わなくても分かる。阿蘭若が好きなのよね」
鳳九は東華とうかを見た。
すると月令花げつれいかが咲いた。

無数の月令花げつれいかは白く輝き、宙を幻想的に舞っている。
鳳九は立ち上がり美しい光景を見渡した。

「これが月令花げつれいかなのね。本当に素敵。陌葉はくよう、200年以上も阿蘭若を思っているのよね。阿蘭若の一生は無駄じゃなかった。ねえ月令花げつれいかを見て。この花に引かれるのは夜空の唯一の彩りだからよ。私たちの目には月令花げつれいかしか映らない」

鳳九は掌に乗った月令花げつれいかを吹いて飛ばした。
「何が言いたい」
東華は尋ねた。

「あなたは阿蘭若を愛し、他の者には一切目を向けないから阿蘭若の姿がより鮮明になった。でも苦しみも深まるはず…私たちは執着など捨てるべきだと分かってても捨てられない」
鳳九は語った。

「ある者だけを思って何が悪い」
「もちろん一途なのは決して悪いことじゃない。だけど阿蘭若のことで苦しんでるなら…」
「私がいつ苦しんだ」
「じゃあなぜ元の姿に戻らないの。それに今夜はやけに無口よ」
鳳九は陌葉はくようの辛い気持ちも分かるから、放っておけないと慰めた。

「誤解している。私が好きな女子おなごは阿蘭若ではない」
鳳九は東華に相手はどんな女子おなごなのか尋ねた。

「美しい女子おなごだ。ますます美しくなった。性格もよくて有能だ。何でもできる。申し分がない。私が選んだ以上、当然完璧だ」
『顔も性格もよくて有能。どうりで阿蘭若は早死にしたわけね。“美人薄命”って本当だわ。天に妬まれ若くして亡くなった』
陌葉はくようは辛くて阿蘭若を好きだと認めないと思っている鳳九は考えた。

「たぶん私も以前ある方を深く愛してたはずよ。おぼろげな記憶だけどそんな感じがする。愛してたけど一度も報われたことがない」
「恐らく相手は今頃悔やんでいるだろう」
「あの方は傲慢だと思う。だから私は思い出すたびにつらくなるのよ。花も散ったしそろそろ帰りましょ」

鳳九が東華とうかの手を引き歩き出そうとするのを、東華とうかは引き止めた。
2人は見つめ合い、鳳九は東華とうかの仮面をはずした。

息澤そくたく様、なぜだましたの」
「己が蘇陌葉そはくようだとはいっておらぬ」
「私はあなたと話をしてたの?」
東華は頷き、鳳九は逃げ出した。

部屋に帰ってきた鳳九は、偽物だとバレたかもしれないと不安に思ったが、夜も遅いので寝てしまうことにした。

東華は怪我の治った橘諾きつだくの胎内を調べ、鳳九の元神げんしん(肉体を超越した命の精髄)が宿っていないことを確認した。

翌日、鳳九の所に陌葉はくようがやってきて、事の顛末を教えた。
嫦棣じょうていはわがままだが大王に最も愛されている」
陌葉はくようは面倒なことになるかもしれないと話した。

「なぜ嫦棣じょうていだけ溺愛されるの?」
傾画けいがの大王への憎しみが、嫦棣じょうていの誕生後、和らいだのやも。しかも嫦棣じょうていは末娘で傾画けいがにかわいがられている」

2人が話していると大王からの呼び出しを受けた。
鳳九と陌葉はくようは大王・相里闕しょうりけつの前に進み出た。

「余はお前を哀れみ蛇の乗船を許した。だがお前は蛇を放任し嫦棣じょうていを気絶させた。…お前の罪は?」
大王は怒りを露わにしている。

陌葉はくようと王子相里賀しょうりがは鳳九をかばった。
鳳九は石籠せきろうで10日間反省するよう申し渡され、陌葉も謹慎するよう言われた。

石籠せきろうに入れられた鳳九は、すぐにやってきた2人の兵士に石籠せきろうから出された。
「罰はもう終わり?」鳳九が喜んだのも束の間、兵士は鳳九に手刀を食らわせ気絶させると、どこかへ運んでいった。

嫦棣じょうていは東華を訪ねた。
「父が今日有名な劇団を呼んだので…ご一緒にいかがでしょうか?」
嫦棣じょうていは色目を使っている。
「分かった」
東華は冷たく答えた。
冷たくあしらわれた嫦棣じょうていは面白くない様子で帰っていった。

東華は大王に阿蘭若の罰を軽くしてくれるよう求めた。
石籠せきろうで反省させるだけだ。軽い罰にすぎない」
大王は取り合わなかった。

鳳九が目覚めると、そこは九曲籠きゅうきょくろうの中だった。
九曲籠きゅうきょくろうには茨のようなとげのある植物が絡みついていて、触れると電流が流れ痛みが走る。

阿蘭若あらんじゃくの両親は実の娘にどんな恨みがあるの?」
鳳九が恨み言を呟くと、嫦棣じょうていがやってきた。

九曲籠きゅうきょくろうは快適かしら?…私はやられたら倍にして返す…父上はあんたを石籠せきろうに入れた。でも私は足りないと思ったから九曲籠きゅうきょくろうに移すよう命じたわけ。姉上、心地いい?」
嫦棣じょうてい、なぜ同腹の姉にこんな真似を?」

「己の身分をわきまえなさいよ…私は両親に愛されてる末娘であんたは邪魔者。私があんたを殺しても禁足の罰で済む」

その時、「火事だぞ」と人々が叫ぶ声が聞こえた。
「運が悪いわね。私を恨まないで。天はあんたに同乗して済度さいどする」
鳳九を籠に残したまま、嫦棣じょうていは逃げた。

九曲籠きゅうきょくろうの置かれた建物には火が回り、鳳九は気絶している。
沈曄しんようは火の中を駆けつけ、鳳九を助け出した。
東華も駆けつけたが、すでに鳳九は助け出された後だった。

「帝君、帝君」と言いながら苦しむ鳳九に、沈曄しんようは薬を与えた。
鳳九は少し目を覚まし、沈曄しんように救われたことを知った。
沈曄しんようは再び意識を失った鳳九を抱いて暁寒居ぎょうかんきょの門前に運び、木の側に置いた。

阿蘭若あらんじゃく、必ず蘇らせる。私も皆もお前に借りがあるが、いずれ全て返す」
沈曄しんようは眠る阿蘭若に言い、誰か来る気配を感じると去っていった。

陌葉はくようは門の前にいる鳳九を見つけ、部屋に連れていき寝台に寝かせた。

目覚めた鳳九は、沈曄しんように助けられたことを話した。
陌葉はくようは今日火事が起こることを知っていた。
しかし、当時の阿蘭若は暁寒居ぎょうかんきょに籠っていたため火事には関わらなかった。

鳳九は嫦棣じょうてい九曲籠きゅうきょくろうに閉じ込められたことを話した。
阿蘭若あらんじゃくは騒ぎを起こして投獄されたことはなかった。そなたは阿蘭若とは違うゆえ遭遇することも違う」
阿蘭若あらんじゃくと同じ一生など歩めないのに、死の真相が分かる?」
鳳九は陌葉はくように尋ねた。

「心は変わらない。例えば橘諾きつだく嫦棣じょうていたちのそなたに対する心だ」
「私が阿蘭若の一生を歩み、みんなの心を理解すれば死の真相も分かるのね」
「いかにも。よって阿蘭若の生き方にこだわらなくてよい。ただ忘れるな。重大事においては、必ず当時の阿蘭若と同じ決断をしろ」
鳳九は頷いた…。

感想

予想通り嫦棣が穴に落ちました。
なぜだかわからないのですが、私は人が穴に落ちるのを見ると無条件で笑ってしまうようです。
今日気付きました。
師匠の帝君コスにも笑いました。
そう考えると、帝君はいつもあの姿なのに笑いが起こらない、むしろかっこいいのはすごいと思い始めました。

鳳九はおぼろげながら記憶があり、それは意識がない場合にはより鮮明になるようです。

沈曄しんようさんは阿蘭若の夢の中の人物ですが、全てを知っているようです。
もしかしたら、陌葉のように夢の中に本人が入っているのかもしれません。

阿蘭若が冷遇されている理由は、傾画が大王を憎んでいたということと関係していそうです。

果たして犯人は誰なのでしょうか?
嫦棣は阿蘭若が死んでもいいと思っています。
火事になっても籠の扉を開かずに去っていきました。
それに例え阿蘭若を殺しても大した罪にはならないようです。

だから嫦棣が怪しいですが、それだとつまらない気がします。
もっと二転三転あるのかなと思うので、犯人が楽しみです。

師匠が犯人というのはやめて欲しいです、どうぞよろしくお願いいたします。

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